2024年09月05日 公開
Xフォロワー39万人突破の大人気精神科医Tomy氏。ゲイのカミングアウト、愛するパートナーとの死別、そして、うつ病の発症......苦しみぬいて得たその考え方は、多くの人にヒントを与えてくれる。『THE21』2024年10月号では、50代が陥りがちな孤独・健康・相続の相談事をTomyさんが解決。その温かくも、斜め上からの回答に、モヤモヤした悩みも一掃されるはずだ。(構成:辻 由美子)
※本稿は、『THE21』2024年10月号特集「50代で必ずやっておくべきこと」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
【孤独】
これまで独身で暮らしてきましたが、老後もひとりと考えると寂しくてたまらなくなります。 人づき合いが苦手で、恋愛経験もほとんどないまま50代になりました。心を許せる友人もおらず、結婚もしていないので、仕事を辞めたあと、どうやってひとりで日々を過ごせばいいのか......孤独な老後が怖いです。(52歳・女性)
――年を取るほど孤独感はやわらぐ。頭を"お暇"にしないよう練習しよう。 ――
若いときの孤独は精神的にけっこうキツい。でも年を取るにつれて孤独に慣れてきます。それは身体が執着を求めなくなるからです。
他人と一緒にいるとそれなりにエネルギーを使います。でも年を取ってくると、その体力がなくなってくる。ひとりで過ごすほうがラクなのです。たまに寂しさを感じても、その割合は年を取れば取るほど減ってきます。
安心してください。うまくできたもので、人は自分の孤独にはちゃんと打ち克てるようにできているのですよ。アナタがもし、老後ひとりで日々を過ごすことが不安なら、今から自分だけで過ごせる練習をしておくといいですね。
これは練習しないとできません。逆に言うと、練習すれば誰でもできるようになります。例えばひとり旅をしたり、ひとりでレストランで食事をしたり。自分だけで楽しめる時間を意識して持つといいでしょう。
ただ、いくら孤独に慣れても、一日誰とも話さないのは精神的によくありません。ときどき電話できる友達を見つけておくとか、行きつけの喫茶店をつくってマスターと挨拶できる仲になっておくとか、ネットで交流できる相手を探しておくのもいいでしょう。相手が誰もいなかったら、ペットの犬や猫に話しかけるのでもかまいません。
もしどうしても孤独を感じてしまうときは、頭を"お暇"にしないよう、目の前のことに集中しましょう。
そもそも孤独を感じるのは頭が"お暇"で色々考えすぎてしまうからです。そんな隙間をつくらないよう、例えばコーヒーを飲んでいるなら、その味、香り、温度、舌に触れる感触などに集中して味わう。散歩をしているなら、周囲の景色や空の様子、風や太陽の光を感じながら、歩くことに集中しましょう。
目の前の一つひとつの事柄に全集中して頭を忙しくしていれば、孤独を感じる暇もなく、あっという間に時間は過ぎていきますよ。
【健康】
加齢のため、眠りが浅くて疲れも取れず、気持ちが抑うつ状態になりがちです。 このところ寝ていても途中で目が覚めてしまうことが多く、疲れが取れません。腰には常に軽い痛みがあり、五十肩もあって身体もスッキリしません。会社でも家でも、まだまだ頑張らなくてはいけないのに、なかなかやる気も出ない毎日です。(51歳・男性)
――中途覚醒も身体の不調も年相応のもの。体力に合わせた働き方をすればいい。――
夜、変な時間に目が覚めて、3時間くらいしか睡眠が取れず、昼間も眠気が残るようなら、心療内科か精神科に行ってください。
でも、夜中に目覚めても、昼間、眠気が残らず、元気でいられる人は心配いりません。年を取ると眠りが浅くなるので、夜中に目が覚めるのは年相応の状態です。ただ、他に病気があるといけないので、念のため病院で検査は受けてください。
アテクシの場合、夜中に目が覚めてなかなか眠れなくても、夜が明ける頃、朝の6時くらいまでなら、頑張って眠りにつこうとふとんの中で粘ります。6時を過ぎても眠れなかったら、さすがにもう諦めて起きてしまいますが、その日は一日だるくて不調なので、だからこそ頑張って寝ようとするわけです。
でも人によっては、3時くらいに目が覚めて、そのまま起きてしまっても一日中元気でいられることもあります。そういう人は無理して寝ずに起きてしまってもいいでしょう。
年齢を重ねると、睡眠だけでなく、体のあちこちに不調があらわれます。 それはもう仕方がないことですので、不調にばかり目を向けず、体力に合わせた過ごし方を心がけましょう。
特に大切なのは、前にも述べましたが、頭が"お暇"にならないようコントロールすること。目の前のことに集中すれば、抑うつ的な不幸感はあまり感じなくてすみます。
今は仕事をリモートワークに切り替えることもできます。そのときの体力に応じた働き方を自分でつかんでおけば、夜中の中途覚醒や身体の不調に過度に神経質になることはないのではないでしょうか。
【相続争い】
母の面倒も見なかった妹に遺産の半分が行きそうで納得できません。 最近、母が亡くなり、妹と遺産分割でもめています。妹は、認知症だった母の面倒を、近くに住む私に任せきりだったのに、遺産は欲しがり、遺産分割に弁護士を入れてきました。その弁護士と私でやりとりしていますが、妹に遺産が半分行きそうで納得できません。(50歳・女性)
――こじれるのは元から感情的なしこりがあるから。第三者を入れて法的に解決すべし。 ――
お金がからむ問題は、弁護士を入れたほうがいいでしょう。弁護士に頼むメリットは、自分の主張を代弁してもらえることです。
弁護士であれば、アナタの介護に対する貢献分も加味して調整してくれるでしょう。言いたいことがあるのに、ちゃんと言えないから、ストレスがたまって相手のことが許せなくなるのです。そうならないために第三者に入ってもらうわけです。
特に相手が弁護士を立てている場合は、プロに対して素人のアナタが戦うので、思うように主張が通らず、余計に嫌な思いをするのではないでしょうか。
弁護士費用がもったいないという人もいますが、自分が前面に立って消耗して嫌な思いをするのと、弁護士費用のどちらを取るのかということでしょう。アテクシなら多少お金を払っても、面倒くさくてモヤモヤする問題からは離れたいと思います。
相続にからんで、きょうだい間でもめる話をよく聞きますが、感情的にこじれるのは、もともとの関係があまり良くなかったことが背景にあります。前から相手のことが嫌いだった。それが相続という問題で一気に吹き出し、感情を増幅させてぶつけ合うことになるのでしょう。
こうなると冷静な話し合いは難しい。感情的に疎遠になっている兄弟姉妹で、相続問題が起きそうなときは、最初から弁護士を立ててしまうのがお互いに嫌な思いをしないで済む方法のように思います。
更新:12月10日 00:05