親の介護について不安に思いつつも、まだ他人事として深く考えていない、という方は少なくないでしょう。しかし祖母と母のダブル介護を経験した工藤広伸さんは、40歳から自分事として介護の準備をすべきと語ります。ミドル世代が「親が元気なうちに考えておくべき」3つのことを紹介します。
※本稿は、『THE21』2023年10月号特集「50代で必ず整理しておくべきこと」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
私は、企業向けの講演などの場で、親の介護に対する心構えや備えについて話す機会が多いのですが、残念ながら多くの人は「うちの親はまだまだ元気だし、そのうち考えればいいだろう」と思って何もしません。
しかし、介護はある日突然始まります。介護が始まるきっかけの第1位は認知症で、第2位が脳卒中です。認知症はある程度の時間をかけて徐々に症状が進行しますが、脳卒中で倒れたら、その日からすぐに家族が対応しなければいけません。
私の場合も、母は認知症ですが、介護がそもそも始まったきっかけは祖母が急に倒れたことだったので、やはり緊急の対応を迫られ、そのまま祖母と母のダブル介護に突入しました。
その経験と反省を踏まえ、私は多くの人に親の介護を自分事としてとらえてもらおうと「40歳・48歳・51歳・75歳」の「4つの年齢」を意識することを提案しています。
40歳
介護保険料の徴収が始まる年齢です。給与明細を見て介護保険料が引かれているのを目にすれば、介護が少しずつ我が身に迫っていることを意識するようになります。
48歳
現在介護を行なっている人への調査(大王製紙「『介護と年齢』に関する意識・実態調査」)において、「将来、在宅介護をするかもしれない」と意識し始めた年齢の平均です。
51歳
同調査で、実際に在宅介護を始めた平均年齢です。この年代になってくると、もはやいつ親の介護が始まってもおかしくないことがわかります。
75歳
体力や判断力の衰えによって、親が自立した生活を送るのが難しくなり始める年齢です。
皆さんの中にも、自分や親の年齢が4つの年齢に該当する人は多いと思います。ぜひこの記事をきっかけに、親の介護を他人事ではなく、自分事としてとらえてもらえれば幸いです。
兄弟姉妹を交えて準備しておきたいこともあります。家族側の介護の窓口となるキーパーソンを決めておくことです。
工藤家では私がキーパーソンを担っています。介護について兄弟姉妹で話し合うと、たいていは「長男(長女)がやるべきだ」「実家に近い人がやればいい」といった押しつけ合いが始まります。
しかし私の経験上、長男か次男か、距離が遠いか近いかなどは重要ではありません。キーパーソンに必要なのは、社会性とコミュニケーション力を備えていることです。
介護は家族だけではなく、ケアマネジャーやヘルパー、作業療法士、デイサービスのスタッフ、医師や看護師など、介護・医療のプロたちの力を借りながらやっていくものです。
つまり介護は、様々な役割を担う人たちが1つのチームを組むプロジェクトであり、チームが円滑に回るようにマネジメントするのがキーパーソンの役割だと考えてください。
よって、仕事で管理職の経験がある人は、キーパーソンに向いているかもしれません。私自身、会社員時代にマネジャーを務めましたが、年齢や立場の違う人と意思疎通をしたり、部署間調整をしたりした経験が、母の介護にも役立っています。
介護の窓口となるキーパーソンを決めるときは、「誰に任せればチームのコミュニケーションがうまくいくか」という視点で決めるのが理想です。
更新:11月12日 00:05