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元長者番付1位・清原達郎は「新NISA」をどう見る? 初心者のための投資術

2024年06月25日 公開

清原達郎(元・タワー投資顧問運用部長)

 

成長投資枠で投資するなら「割安小型株」に注目

資金に余裕がある人や、積立投資以外にも広げてみたい人は、新NISAの「成長投資枠」を使い、自分で個別銘柄を選んで投資してはいかがでしょうか。

お勧めしたいのは、「割安小型株」です。私が運用していたK1ファンドでも、この割安小型株をポートフォリオの中心に据えていて、ファンドのパフォーマンスは割安小型株の爆発的な成長に支えられていました。

小型株の私の定義は、時価総額500億円未満の株式のことです。小型株は流動性が低いため、機関投資家の投資対象になりにくく、株価が安いまま放置されています。つまり、アナリストとつながりのない個人投資家でも勝算の持てる領域なのです。その中から成長株を見つけて投資できれば、大きな儲けが期待できるというわけです。

割安株を見つけるうえで目安にしたいのは、PER(株価収益率)とネットキャッシュ比率です。PERは、収益に対して株価が割安かどうかを示しており、数値が低いほど割安といえます。

一方、ネットキャッシュ比率について、私は、以下のような公式で定義しています。

ネットキャッシュ比率=(流動資産+投資有価証券×70%-負債)/時価総額 流動資産や投資有価

証券は「赤字か否かにかかわらず現金化できる、企業の資産」を指します。ここから負債を引き、最後に時価総額で割ることで、「企業がどうなっても現金化して残せる資産が、時価総額あたりでどれだけあるか」を求めることができるのです(投資有価証券にかけた70%は、現金化する際の税金を大雑把に30%として計算したものです)。

このネットキャッシュ比率が高い企業は(例えば1以上なら)、多少減益になっても株価はまったく下がらないかもしれませんし、仮に赤字になっても株価が暴落する確率は低いでしょう。

また、巷でよく使われるPBR(株価純資産倍率)という指標でも、大雑把な割安さの目安にはなります。PBRは純資産に対して株価が割安かどうかを示しており、PER同様に数値が低いほど割安といえます。ネットキャッシュ比率が複雑だと感じる方は、チェックしてみてください(もっとも、私が重視すべきと感じているのはネットキャッシュ比率の方ですが)。

探し方のポイントとしては、「イメージの悪い業界」を見てみると、そこに成長株が紛れていることが往々にしてあります。本来そこまで安くなくてもいいのに、イメージにつられて安くなっているケースです。

例えば、中小の不動産会社は、リーマンショックで立て続けに倒産が起こった印象が強いのか、株式市場での評価がいまだに低いです。

また、小型株の成長性は経営者で決まると言っても過言ではありません。HPで社長の発言をチェックして、その企業を成長させる強い意志があるかどうかを確認するとよいでしょう。他にも、HP上で開示されている決算説明会の資料や「会社四季報」などで、会社の状況をチェックするのはお忘れなく。

資金100万円で割安小型株に投資する場合、次のような方法を提案したいと思います。

①低PBR銘柄、低PER銘柄の中から興味を持った20銘柄ほどを選び、画面に登録して株価の動きをモニターする。

②相場が急落して、20銘柄の株価も下がったら、大きく下がった10銘柄を一気に10万円ずつ買う。株価が1000円の株なら100株、500円の株なら200株。10銘柄で合計100万円になるようにする。

③株を買ったら、3年間(場合によっては5年間)は持ち続ける。その間は会社四季報やHPで時々フォローする。

大事なのは、会社の業績が伸びて、株価が3割くらい上がったとしても、すぐには売らないことです。割安小型株の株価は倍以上になる可能性を秘めています。最低でも2倍は狙いたいものです。

一方、株価が大きく上昇した割には業績が冴えない、つまり「もはや割安ではなくなった」という場合は、売却に切り替えるのもアリでしょう。

ですが、割安株を買ったのなら、少々業績が伸び悩んでも持ち続けたほうが得策だとは思います。もともと世の中が成長しないと決めつけている株を買ったわけですから、「成長するかもしれないという自分の思い込み」が間違っていたとしても、悲観して投げ売る必要はありません。それが割安株投資の良いところです。

最初は銘柄選びに失敗して、満足のいくリターンが得られないばかりか、損することもあるかもしれません。でも、それでいいのです。失敗から学んでいけばいいのですから。

 

投資の勘を養うには失敗から学ぶしかない

成長投資枠には「割安小型株」がお勧め

投資を始めるにあたっての注意点としては、「手持ちの金を全額つぎこまないこと」。例えば200万円の余裕資金がある人は、まずは100万円で投資を始めましょう。万が一、株式市場が暴落したときに株を買えるお金を残しておくのです(繰り返しますが、株価が下がったときこそ「買い」です)。

また、複数の銘柄に挑戦してみることも大事です。先ほどは10銘柄を購入するパターンを紹介しましたが、それが難しいなら7銘柄程度でも構いません。銘柄数が多ければ、その中で儲かる銘柄や儲からない銘柄が出てくるので、相場の感覚が磨かれていきます。

これが1銘柄や2銘柄だと、たまたま儲かったときに「自分には株の才能があるかも!?」と勘違いしてしまうかもしれません。株式投資の勘は成功よりむしろ、失敗から学んで磨いていくしかないのです。

日本株がここまで急上昇すると、投資家が不安になるのは当然ですが、半導体関連の一部の銘柄にはバブルの兆しが見えるものの、全体として見れば、日本株はバブルではなく、まだ割安と言えます。私の印象では、今後も日本の低金利は続くでしょう。

現預金のまま資産を持っていても、物価高に追いつかず、価値が相対的に目減りするのは明らかです。新NISAは、まさに「老後の資産作り」を意識した制度と言えるので、40代、50代が新NISAで投資を行なう意味は大いにあると思います。

最後に、新NISAと偽って詐欺商品を売りつけようとする偽サイトにも警戒してください。なお、私はSNSをやりませんので、私を名乗るアカウントを見つけたら、それはすべて詐欺です。ご注意ください。

 

著者紹介

清原達郎(きよはら・たつろう)

元・タワー投資顧問運用部長

1981年、東京大学教養学部卒業。野村證券やゴールドマン・サックス証券、モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問などに勤務。98年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」を立ち上げ。2005年に発表された長者番付で1位に躍り出る。23年、「タワーK1ファンド」の運用を終了。 (著者プロフィール撮影:野口 博 )

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