自身のお金についての考え方をまとめた著書が68万部(電子書籍含む)のベストセラーになり、最近は、ますますお金や投資についての意見を求められることが増えているという、厚切りジェイソンさん。人生で大切にしていることや実践している投資法、日本人のお金に対する姿勢で「Why!?」と思うことなどについて語ってもらいました。(取材・構成:石澤寧 )
※本稿は、『THE21』2023年9月号特集「インフレ時代の『お金』の新常識」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
――ご著書『ジェイソン流お金の増やし方』が68万部のベストセラーになっているようですね。
【厚切り】おかげさまで! コロナ禍以降、多くの人がお金のことで不安になったのか、僕の投資法について取材を受けることが増えて、それで本にしようと思ったんです。
――ご家族全員が一生安心して暮らせるだけの資産を築いたと聞きました。実践している投資法は、どんなものなのでしょう?
【厚切り】僕の投資法は、とてもシンプルです。
米国株のインデックス・ファンド(株価指数に連動する投資信託)を定期的にコツコツ買っていくだけ。一度買ったら、何があっても売らずに持ち続けています。
具体的には、「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(通称:VTI)」というETF(上場投資信託)を、ただひたすら買って持っているだけです。
VTIはアメリカの約4000銘柄に幅広く分散投資しているETFで、米国市場に上場している株式の99%以上をカバーしています。VTIに投資をするということは、アメリカの市場のほぼ全体に分散投資をしているのと同じ意味です。
投資の世界には、「卵は1つのかごに盛るな」という超有名な格言がありますが、1つの商品を買うだけでアメリカ全体の企業に丸ごと投資できるって、すごいですよね。
ただ、VTIはドルでしか買えないので、投資初心者には、ちょっとハードルが高いかもしれません。日本には、VTIに連動する円で買える投資信託、例えば「楽天・全米株式インデックス・ファンド(通称:楽天VTI)」などがあるので、それに投資するのもおすすめです。
VTIに投資する際は、「ドル・コスト平均法」といって、一度にまとめて買うのではなく、毎月いくらと決めた一定額を少しずつ淡々と積み立てています。これで時間の分散ができるわけです。
VTIは、20年の長期スパンで見ると、年換算リターンが6.4%を下回ったことがないんです。
もちろん、これは過去のデータなので未来はどうなるかわからないけれど、年0.001%しか増えないメガバンクの預金と比べたら、投資をする人としない人の差は確実に開いていきますよね。
――なぜ米国株のインデックス・ファンドなのでしょうか?
【厚切り】アップルやマイクロソフト、アマゾンなど、アメリカにはグローバルに活躍する企業がいくつもありますよね。
また、それらの企業を率いる経営者たちは、基本的に株価に連動して報酬が決まるし、彼ら自身も大株主なので、必死になって株価を上げようとします。そういった理由から、他の国や地域よりも安定的に高成長が期待できる国だと考えているんです。
実際、米国市場はこれまで何度も暴落に見舞われていますが、2008年のリーマン・ショックのときは約5年、この前のコロナ・ショックでは、わずか5カ月後には株価が回復しました。暴落からの強い回復力があることも、僕が米国株に投資を続ける理由です。
もちろん、これはあくまで僕の考えです。アメリカだけでなく全世界の株式を対象にしたファンドもあるし、SDGsに関連したESG投資などもある。興味があれば自分で調べてみるといいですよ。
――日本人のお金についての姿勢で「Why Japanese people!?」と感じることはありますか?
【厚切り】投資に後ろ向きな人が多いことですね。
日本人は、どちらかと言うと安定志向の人が多いし、老後の年金や万が一のときの公的なサポートもアメリカよりしっかりしているので、投資をしなくても大丈夫と考えているのかもしれません。ですが、もう少し投資に興味を持ってみてもいいんじゃないですか。
――確かに積極的に投資をやっている人は少ないかもしれません。でも、「お金について漠然とした不安がある」という人は多そうです。
【厚切り】そう思うなら、まずは日常の生活の中で無駄遣いを減らすことから始めてみましょう。
「お金について不安だ」と口では言っているけれど、毎朝コンビニでコーヒーやお菓子を買ったり、仕事帰りに週何度も飲みにいったりしている人、結構いるんじゃないですか。
例えば、毎朝コンビニでコーヒーとお菓子に300円使うと、1カ月で9000円、1年では10万8000円になります。長い期間で考えると、かなりの金額です。
そのコーヒーとお菓子に10万円以上の価値があると思うなら問題ないのですが、何も考えずなんとなく買っている人もいますよね。
もちろん、本人がそれで満足しているなら、僕が口を出すようなことではないですが、「不安だ」と思うなら、収入を増やすか、無駄遣いを減らすしかないですよ。
更新:12月10日 00:05