デジタルの最先端は米中だと言われるが、日本が学ぶべきは「東南アジア」である......。そう主張するのは、シンガポールにてコンサルティングを行う坂田幸樹氏だ。なぜ今、東南アジアから学ぶべきなのか。東南アジアのDXをけん引する、すごいIT企業とは?
東南アジアでは今、ものすごい勢いでDXが進展している。そして、それをけん引しているのは新興IT企業である。
1社目はインドネシアの社会インフラになったゴジェックである。ゴジェックは、バイクタクシーの配車アプリから事業を開始し、現在ではスーパーアプリへと進化している。
日本ではあまりなじみがないが、スーパーアプリとはあらゆるサービスを1つのアプリに組み込んだ統合的なアプリである。ゴジェックでいうと、フードデリバリー、日用品の販売、清掃、マッサージ、遠隔医療、決済などの各種サービスを1つのアプリ内で提供している。
ゴジェックのすごいところは、「半径5キロ圏内の問題解決」から社会変革を起こしていることである。そしてその過程において、それまであったものに対する破壊行為を行っていない。
たとえば、ゴジェックは地域のパパママショップ(個人経営の小売店)の商品をアプリから購入できるようにした。そして、それを配達してくれるのは、もともと存在していたバイクタクシーの運転手である。要は、もともと存在していたパパママショップやバイクタクシーを有機的につなげただけで、何ら破壊をしていないのである。
これは、もともとあった商店街を破壊してコンビニチェーンや外食チェーンなどを増やしてきた日本とは対照的である。私はこれをシュンペーターの「創造的破壊」になぞらえて、「創造的統合」と呼んでいる。
インドネシアのDXをさらに進展させたのは、B2B型の新興IT企業である。次に紹介するBlibliMitraは、パパママショップが使用するアプリを提供している。
元来パパママショップは、近くの問屋から商品を仕入れている。ただ、メーカーから問屋に商品が届くまでには、多層化したサプライチェーンを経由している。結果、遅延や商品の劣化、中間マージンによる価格の上昇などが問題となっている。
これらに対して、BlibliMitraはパパママショップがメーカーから直接商品を購入できるアプリを提供した。パパママショップの店主はわざわざ問屋に行くことなく、アプリ経由で信頼性の高い商品を低価格で購入できるようになった。
ゴジェックは各種プレイヤーをつなげることで効率性を高めたが、BlibliMitraはその社会インフラの上で多層化したサプライチェーンを打破して社会変革を起こした。
最後に紹介するのはインドネシアのクルーという新興IT企業である。
現代はあらゆるものがデジタル化されている。そして、その結果として多くのものがコモディティ化している。しかし、私たちがそれぞれに特徴を持つ個々の人間である以上、最終的に大事なのはアナログ情報である。
クルーは、アナログ情報を収集して、社会問題の解決をした。地域の住民は日々感じている不満を、クルーのアプリに投稿することができる。もし地域の道路が破損していたり、ごみが散乱していたりしたら、写真に撮ってアプリに投稿する。そして、地方自治体が問題の解消をしたら、写真とともに結果が投稿される。
センサーをつければ、デジタルに情報を収集することはできる。もちろん、そのような情報にも大いに意味がある。しかし、そのような時代だからこそ、人間が五感で感じ取ったアナログな情報にこそ意味がある。
世の中がデジタル化されてコモディティ化されたら、アナログこそが価値を生むのである。日本もデジタルの力で元来持ち合わせているアナログ価値を増幅させることができれば、新たな世界を生み出せるであろう。
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更新:11月24日 00:05