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“一生懸命努力する仕事”ほど人工知能に奪われる...現代のアウトプット術とは?

2023年11月05日 公開

内田和成(早稲田大学名誉教授)、楠木建(一橋大学大学院特任教授)、入山章栄(早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授)

 

インプットで大事にしていること

入山章栄
入山章栄氏

――インプットするときに意識していることは何ですか。

【入山】私は可能な限り依頼された仕事を断らないようにしています。なぜなら、それが新しいインプットになるから。依頼された仕事のテーマについて3割程度しか知らなかったら「詳しくないので」と断るのが普通でしょう。

一方、私は3割知っていたら断らず、引き受けてから必死に調べてアウトプットします。そのアウトプットが評価されると、そのテーマの仕事が増えて仕事の幅が広がります。現状維持タイプの人は、よく知らないテーマの仕事でも断らないことをおすすめします。

【楠木】インプットは、情報を頭に入れて終わりではありません。考えるというプロセスが、その次にあります。インプットする情報は、考えるためのきっかけに過ぎません。それを受けて考えることが肝心です。

情報ばかり集めるのは、原材料ばかり集めるのと同じですが、原材料がなくては何もつくれない。なので、新聞や雑誌にも目を通しますし、情報のインプットは普通に行なうようにしています。

【内田】私は興味のある分野の本しか読みませんし、情報も集めません。街を見ていて興味を持つことも、ほかの人が興味を持つことと全然違います。自分が興味のあることについて深掘りしていく。

それがユニークな発想につながっているのだと思っています。インプットのやり方というよりは、興味を持つ領域が他人と違うことが私の特徴なのだと。

【入山】確かに私は何にでも興味を持つタイプで、仕事の選り好みもしません。来る者は拒まず、です。

【内田】だから、入山さんは私の100倍くらい仕事の間口が広い(笑)。

【楠木】私も自分の興味がインプットの入口ですが、具体的な事象を一段抽象度を上げて考えることを大切にしています。人間について、社会について「要するにこういうことなのか」を知りたい。もちろん、具体と抽象を往復しながら考えますが、思考の起点と終点は抽象にあります。

【内田】私は具体に興味があって、抽象化せずに何でだろうと掘り下げていきます。そこがずいぶん違う。

【楠木】頭の中に、抽象的な問いのかたちで興味の引き出しがいくつかあり、その問いに関する具体的な事象を見つけると引き出しに入れます。3つぐらい集まると抽象化が進み、アウトプットができるようになります。 

【入山】面白いですね。抽象的な問いが頭の中に常にいくつかあるわけですか。私も学者なので抽象に興味がありますが、問いはまったく持っていません。ただ、「AとBは一見まったく違うけれども、抽象化したら同じになる」といったことを見つけるのは好きだし得意です。

 

知的生産において大切になる自分の喜びのツボはどこ?

楠木建
楠木建氏

――アウトプットを完成させる際に特に大事にしていることは?

【楠木】「頑張る」ではなく「凝る」ということ。本というアウトプットであれば、こういう表現のほうが分かりやすいのではないか、といったことを考えに考えて、文章を練りに練ります。

端から見ると非常に非効率な作業ですが、最後にどれだけ凝れるかが私には一番大切。逆に言うと、それだけ凝りたくなるテーマで仕事をしていきたいと思っています。

【入山】自分のアウトプットの中で、価値を評価されるのはどこなのかをかなり具体的に描いて、頭の中で映像化します。例えば、修士を取得するというアウトプットであれば、修士論文を教授の前でプレゼンするときが評価される瞬間です。

多くの学生は修士論文を書きあげて満足してしまいますが、その段階ではまだ評価されていません。アウトプットの途中です。それなのにプレゼンの練習をしない。アウトプットの価値を最大化すべきところはどこなのか。そこから逆算してどこに力を注ぐのかを考えることが何よりも重要です。

【内田】私もコンサルタント時代、プレゼンテーションの資料や報告書は中間生成物に過ぎないとよく言っていました。コンサルのアウトプットは、顧客が実際に動いて、変わらなければ価値がありません。

したがって、どうすれば相手が動くかを考えて、プレゼンの内容や順番を決めていきます。場合によっては、ケンカを売ったほうが、相手がカチンときて動くこともあります。それで怒られたとしても、相手が本気になって変わってくれたのならコンサル冥利に尽きるというものです。

【楠木】自分の喜びのツボを理解しておくことも知的生産において大切です。内田さんは自分が面白いと思うことが最大の喜びで、あとはオマケという「川上」タイプ。私は自分が面白いと思うだけでは喜べず、一部の人でいいので心の底からそれを評価してもらって初めて喜べる「川中」タイプです。

入山さんは川下、ときに河口の外の海までマーケットにして全体をプロデュースし、たくさんの人から評価されて喜ぶ「川下」タイプでしょう。

【入山】確かに、私は全員に納得してもらい、評価してもらわないと嬉しくありません。だから、テレビに出演したら視聴率が気になります。

【内田】私は何事にも正解はないと思っています。アウトプットやインプットのやり方もそうで、自分の個性やタイプに合わせて、自分の好きなようにやればいい。今日お二人の話を聞いて、その考えが間違っていないことがよくわかりました。

 

【内田和成(うちだ・かずなり】
早稲田大学名誉教授。1951年、東京都出身。東京大学工学部を卒業後、日本航空入社。在職中に慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。その後、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入社し、2000年から04年までBCG日本代表を務める。06年、早稲田大学教授に就任。早稲田大学ビジネススクールでは競争戦略やリーダーシップに関する講義で教鞭を執った。著書に『仮説思考』(東洋経済新報社)、『アウトプット思考』(PHP研究所)など。

【楠木建(くすのき・けん)】
一橋大学大学院特任教授。1964年、東京都生まれ。89年、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年から同大学ビジネススクール教授。23年より現職。専攻は競争戦略。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『逆・タイムマシン経営論』(日経BP)など。

【入山章栄(いりやま・あきえ)】
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。1972年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、同大学院経済学研究科修了。三菱総合研究所を経て、2008年に米ピッツバーグ経営大学院でPh.D.を取得。同年よりニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。13年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。19年より現職。著書に『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)など。

 

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