このパーパス浸透ワークショップについては、自分たちのコアバリュー(核となる強さ)をまず軸に置き、「顧客・顧客の顧客にとって」「社員にとって」「社会(コミュニティ)、地球(未来のこどもたち)にとって」という3つのテーマに沿って考えていくのがポイントだ。
その際には、あらゆる制約を取り払って本当にやりたいこと・なりたい姿を考える必要がある。また、あらゆる制約を取り払って「きれいごと」を言わせることも重要だ。
このフェイズでは味の素の例のように、若手や中堅マネジャー層くらいが重要な働きをすることが多い。シニアはそれを否定せず、もし話がそれそうになったら、「それってパーパスと関係あるんだっけ」「自社のコアバリューを活かせるかな」というように気づかせることが重要な役割となる。
パーパス作成の際と同様、幅広い年代の人たちが一緒になって話し合うことが重要だ。
さて、ここからはパーパス浸透のユニークな施策を実践する企業の事例を紹介していきたい。
まずは、損保大手の損害保険ジャパンなどを傘下に置くSOMPOホールディングスだ。SOMPOホールディングスが実践しているものの一つに、「パーパスワンオンワン」がある。
ワンオンワンとは上司と部下との間で週1~月1程度のスパンで定期的に行なわれるミーティングのことを指し、通常は業務内容についての対話が行なわれる。その内容をパーパスに特化したものがパーパスワンオンワンだ。
SOMPOホールディングスでのパーパスワンオンワンは、このようなシートをもとに行なわれている。
これはリクルートで用いられている「WILL」「CAN」「MUST」のシートと似ているが、WILLがWANTになっているのが特徴だ。
「WANT(心が動く瞬間)」「CAN(運命が与えた能力)」「MUST(解決すべき社会課題)」の3つの重なった領域こそが自分のパーパス(MYパーパス)となる。
上司はメンバーとの対話の中で、この3つの視点からその人のパーパスを引き出していく。
まず、WANTでは「あなたが本当にやりたいこと」を聞く。そして、次に「CAN」を聞くことで、やりたいことを夢物語に終わらせるのではなく、自分にできることに落とし込んでいく。
一番難しいのがMUSTだ。というのも、通常WANTとMUSTの距離は相当に離れている。そこをどう紐づけるかが上司として腕の見せ所となる。
このワンオンワンを行なうことで、一人ひとりに常にパーパスを意識した仕事をしてもらうのだ。ワンオンワンを実践する企業は増えているが、パーパスのみのワンオンワンを行なっている企業となると珍しい。
更新:11月23日 00:05