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有名企業が掲げる“パーパス経営”に消極的な社員を変えたマネジャーの一言

2023年02月15日 公開
2023年03月24日 更新

名和高司(一橋大学ビジネススクール客員教授)

名和高司 パーパス

今、世界的に注目を集めている「パーパス経営」。日本でもすでに先進的な企業はパーパスを中心とした経営を進めている。しかし、せっかく作ったパーパスが、単なる「額縁に入れた飾り」になってしまっている企業も多い。本当に重要な「パーパスの浸透」のために必要なこととは?

※本稿は、『THE21』2023年1月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

より具体的なパーパスへと落とし込む

パーパスは作っただけでは意味がない。それを社内に浸透させなくては、ただ飾ってあるだけの「額縁パーパス」になってしまう。しかし、その浸透こそが難しい。

ここでは、その方法として、会社のパーパスを自部門に落とし込んでもらうという活動についてご紹介したい。いわばパーパスの「自部門化」だ。

例えばメーカーが「自社製品で地球環境を改善する」というパーパスを打ち立てたとして、これを自部門の仕事の指針として活かすには、やはりどうしてもまだ抽象度が高すぎる。

そこで、部門ごとにワークショップを開いてもらうことで、自分たちにとってもっとイメージしやすい、より具体的なパーパスにブレイクダウンしてもらうのだ。

この活動は実際に日々顧客と接する営業部門や、商品を開発・製造する部門の人などにとっては、比較的やりやすいだろう。

しかし、難しいのは間接部門、例えば総務や経理・財務といった裏方仕事の人たちだ。「自社製品で地球環境を改善する」と言われても、自分たちの日々の仕事となかなか結びつかないのが現実だろう。

ここで大事なのは、会社をワンチームとしてとらえ、自分たちはその一端を担っているという意識を持ってもらうことだ。

 

自分の仕事を「駅伝」にたとえる

その成功例として私がよくお話しさせていただくのが、味の素川崎工場での取り組みだ。

味の素がパーパスとして掲げるのは「食と健康の課題解決」だ。私もそのパーパス浸透のお手伝いをしているのだが、やはり間接部門になればなるほどその浸透は容易ではない。

工場内の物流を担う部隊でパーパスについてのワークショップを行なった際のことだ。最初のうちはなかなか会社のパーパスと自部門の仕事とを結びつけることができなかった。

それも無理からぬことで、この部門が担当していたのは工場内での原材料の運搬作業であり、商品そのものを運ぶわけでもなければ、顧客の顔を直接見ることもない仕事だ。

話がなかなか進まない中、30代くらいの初級マネジャークラスの人が立ち上がり、こう言った。

「我々は命の素をA地点からB地点へ運んでいる。我々が運ばないと最終的にお客さんのもとに届かない。これは駅伝のようなもので、我々はその重要な一区間を任されている。そう考えればとても重要な仕事ではないか」。

この発言を機に空気が変わった。会社というワンチームの中で自部門がどんな役割を果たしているかを、見事に言語化したからだ。

このように内部の人が自分の言葉でパーパスを自部門化することができれば、その浸透は一気に進むことになる。

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