社会や職場の大きな変化により、ひと昔前よりも、マネジャー業務の難易度は格段に上がっている──。そう語るのは、立教大学教授の中原淳氏だ。
企業・組織における人材開発・組織開発について長年研究を行なってきた氏に、現在のマネジャーを取り巻く困難と、プレイヤーからマネジャーへスムーズに移行するためのポイントを聞いた。(取材・構成:林加愛)
※本稿は、『THE21』2022年4月号特集「リーダーになったら必ずやるべきこと絶対やってはいけないこと」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
マネジャーのほとんどはプレイヤーも兼ねています。プレイングマネジャーなら自分も現場に立てるから幸せかというと、こちらはこちらで、無数のタスクに忙殺されて大変な思いをしています。
中でも頭痛の種となるのは、実務とマネジメントのバランスが取りづらいことでしょう。ここでも「仕事を渡したくない心理」はしっかり働くもので、放っておくとすぐ、プレイヤーになっている時間の割合が長くなり、マネジメントがおろそかになります。
これを解決するためには、自分がどの業務にどれだけの時間を割いているかを分析することが有効です。
一度じっくり手帳を読み返し、「マネジメントをした時間」「プレイヤーとして働いた時間」を書き出し、色分けをしてみましょう。すると、現時点での問題点や、改善すべき点がわかるはずです。
「この業務にもっと注力すべきだ」「ならばこの業務は自分でやらずに部下に任せよう」というふうに、業務の効率化やスリム化を図ります。それは、プレイングマネジャーから純然たるマネジャーへの、移行の準備にもなるでしょう。
では、「若年マネジャー」の苦労についてはどうでしょうか。こちらはやはり「経験の浅さ」がハンデですが、それは、努力によってどうこうできるものではありません。
ここでやってはいけないのは「わかっているフリ」をすることです。つけ焼き刃の訳知り顔で「こういうときはこうすべきだ」などと言っても、部下には響きません。
「自分もわからないが、こうしたいと考えている」「皆も一緒に考えてほしい」と呼びかけたほうが、はるかに共感度が高いでしょう。
なお、若いがゆえに「年上部下」に遭遇する率が高いのも若年リーダーの難しいところ。年上の相手に耳の痛いフィードバックをするときに神経をすり減らす人も多いようです。
しかしここは、自分のほうが立場が上なのではなく、マネジャーという「役割」を果たしているだけと考える。「立場上、言わざるを得ないのです」という体で語れば、互いのストレスが軽減するでしょう。
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リモート時代のリーダーには「書く・読む」能力も必須 >
更新:11月21日 00:05