アンラーンに不安を感じる人も、きっといるでしょう。形成してきた価値観をリセットすると「自分が自分でなくなりそう」と怖くなる人は少なくありません。
しかし、古びて凝り固まった考え方を脱ぎ捨てたほうが、むしろチャンスは広がります。年を重ねてもなお柔軟な精神を持つことで、周囲からの信望・信頼も厚くなるでしょう。
ですから「1日5分」の振り返りをするとき、今日行なった仕事や下した決定を一つひとつチェックしてみましょう。
会社のカルチャーに染まった固定的な選択になっていないか、安易に過去の慣例に従っていないか、そこに合理性はあるか、他にどんな選択があるか、という風に。その選択を実行しなくとも、枠を外して考えることそのものが有効なアンラーンになります。
さて、こうした毎日の小さな学び直しは、学校通いや資格の勉強などと違い、どこまで進歩したかが見えづらいものですね。しかしここにも、簡単なチェック法があります。
それは、「固有名詞と専門用語を使わずに、自分の仕事を語れるか」。これができたら、一般化ができているということです。
試しに、お子さんや親戚の子どもなど、未成年を相手に仕事の説明をしてみましょう。意外に難しいことがわかると思いますが、相手に通じる言葉を探る工夫が、良いトレーニングになります。
もう1つは、「ある具体的体験から得た知恵を、別の場面に応用できているか」を、日々の行動から拾い出してみること。知恵の「横展開」ができているなら、一般化のスキルも、発想の柔軟性も増しています。
日々小さく振り返りを重ね、進歩の跡を確かめながら、新しい自分へと歩んでいきましょう。
【プロフィール】柳川範之(やながわ・のりゆき)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学通信教育課程をシンガポールで修め、帰国後に東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。慶應義塾大学講師、東京大学大学院経済学研究科助教授等を経て現職。『東大教授が教える独学勉強法』(草思社)など著書多数。最新刊は為末大氏との共著『Unlearn 人生100年時代の新しい「学び」』(日経BP)。
※(『THE21』2022年7月号特集「40代・50代で必ずやっておくべき「学び直し」」より)
更新:11月22日 00:05