「一般化・抽象化」と言うと難しく聞こえますが、アプローチはごくシンプルです。
例えば、過去から現在までに出会った上司について考えてみましょう。部署が変わったりチーム編成が変わったりするごとに、これまで何人もの上司と関わりを持ってきたはずです。
これは一見何の変哲もない、誰もが通る道に思えますね。しかし「学び直し」を経ると、きわめて有用なスキルになる可能性を秘めています。
個々の上司との間で起こったエピソードや、そこで抱いた思いを、とりとめのないままにせず「整理」をしてみましょう。
切り口は自由です。例えば、これまで出会った「見習いたい上司」「反面教師にしたい上司」。なぜそう思ったのか、それぞれどのような行動や考え方をする人だったのか、振り返ってみましょう。
そこにはきっと、自分の価値観に基づく一定の法則性があります。それを見出せたら、「自分は上司としてどうありたいか」という、リーダーシップの指針を持つことができます。
上司との人間関係に苦労した方も、相手の人となりや自分の対応、その失敗や成功の分析を通して、「上司と円滑にコミュニケーションをとる秘訣」といった知恵に結びつけられます。
このように、一見平凡な経験が、優れたコミュニケーションスキルへと変化するのです。これが、「今ある知識を活用する」ということです。
うまく整理できないこともあると思いますが、気にしなくて構いません。工夫すること自体に意味があるからです。経験を捨て置かずに振り返る姿勢が、自ずと学びを生成するのです。
「自分だけの偏った見解になっていないか?」と不安になることもあるかもしれませんが、そこも気にしなくて大丈夫です。出来事をどう解釈するか、どんな知恵を導き出すかに「正解」はありません。つまり、自分で決めて良いということです。
「自分はこう解釈し、今後にこう生かす」と決めたなら、それが現時点での答え。その先でまた壁にぶつかれば、また振り返って検討し直せばいいのです。
もちろん、他者の視点が助けになることもあります。振り返りの「仲間」を作ることはとても有効。数人で集まって、それぞれの経験や考えを語り合い、互いにフィードバックするのは大いにお勧めです。
1人で考えるときとは違った視点が得られますし、自分では気づかなかった自分の強みに気づかせてもらえることも多々あります。
仲間を作るなら、職場以外の人が良いでしょう。例えば大学の同級生なら、気心が知れていて、かつ現在は違った環境に身を置いているため、視点が多彩になります。
さらに良いのは、世代の違う仲間を作ることです。日本社会は、縦の人間関係に親密さが生まれづらい傾向があります。違う世代と接するときについ「上司と部下」のような口調になって、フランクに話せない方も多いでしょう。その縛りを解くためにも、年の離れた人と友人関係の構築を図ってみましょう。
そのためには、趣味でつながるのが近道です。スポーツ、楽器、鉄道、何でも構いません。同じ趣味を持ちつつ、異なる年代や業種の人々と接することで、これまで出会うことのなかったものの見方を知ることができます。
更新:11月22日 00:05