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成功しても満たされなかった人が、50代で気づいた「本当にやりたかったこと」

2021年03月26日 公開
2022年10月11日 更新

林浩喜(社会起業大学学長)

林浩喜(社会起業大学学長)

50代に差しかかると、自分の会社での立場も何となく予想がつくようになるもの。このままの仕事、生活を続けていていいのかと悩む方も多いだろう。50代になってから、大きく成長した会社を手放し、自分のやるべきことを手に入れた、社会起業大学学長の林浩喜氏に、自分が納得できる後半戦の生き方について、ヒントをうかがった。(取材・構成:前田はるみ)

※本稿は、『THE21』2021年3月号より一部抜粋・編集したものです。

 

「自己ミッション」を言語化するには?

人生100年とすると、50歳はまさに折り返し地点です。読者の皆さんは、現在、会社で働いていらっしゃる方が多いでしょう。私も50代前半までは、「BAGEL&BAGEL」というベーグル専門店の運営会社の代表でした。代表とはいえ、会社組織の一員であることに変わりありません。

会社で働いていると、会社に与えられた役割やミッションを果たすことに汲々とし、もっと給料や地位を上げようとがむしゃらになりがちです。でも、「それだけでいいのか」とふと立ち止まるのが、50歳前後の時期ではないでしょうか。

私もそうでした。経営者としてではなく、肩書や地位を一切なくした一個人として、どう生きていきたいのかを自問自答するようになったのです。その内省の先に、「自己のミッション」と呼べるものを見つけました。結果的に会社経営から退き、56歳からは社会起業大学の学長を務めています。

50代を迎えたら、「自己ミッションの言語化」のプロセスを踏むことが最も大事なことだと私は思っています。そのためにはどうすればよいのか。私の経験が少しでも皆さんの参考になればと思い、お話しさせていただきます。

 

起業に成功しても、満たされなかった

「自分の人生、このままでいいのか」と違和感を覚え始めたのは、47歳頃のことです。それまでの私は、「規模の拡大」こそが成功だと思い、会社を大きくすることにやりがいを感じていました。

ベーグルという、日本にはなかった食べ物を多くの人に食べてもらいたい。その想いで立ち上げた会社は、規模こそ予想以上に大きく成長し、納税義務を果たし、雇用も十分に創出していました。

ところが、会社が成熟期に入る頃から、満たされない思いを抱くようになりました。数字の昨対比に追われる毎日に、「これを一生続けるのか」と思うと、その先に自分の幸せがあるとはどうしても思えなかったのです。

自分が幸せでなければ、周りを幸せにすることはできません。そのうち、経営者である私自身、仕事へのモチベーションを保つのが困難になっていきました。そのきっかけには、若くして亡くなった弟の存在もあったと思います。

弟は、私が30代前半のときに突然死しました。「人生は一度きりだよ」と身をもって教えてくれたのです。そんなこともあり、「今の自分がやっていることが本当にやりたいことなのだろうか」と自問自答するようになりました。

 

変化の時代に生き残るために

時代の大きな変化も、私に内省を迫った要因の一つでした。行きすぎた資本主義への反動やAIの登場などによって、私たちの働き方は大きく変わりました。このコロナ禍で、その変化は決定的なものとなりました。

環境が変われば、これまで善とされた価値観も変わっていきます。会社における肩書や地位は、あまり意味を持たなくなっていきます。近頃になって、「副業OK」とか「自由に生きよう」などと言われて、戸惑っている人も多いのではないでしょうか。

こうした環境変化の下では、組織人の仮面を被った自分ではなく、「素の自分」としての軸や芯のようなものがないと、変化に振り回されてしまいます。つまり、「お前は何者なんだ?」「お前のミッションは何なんだ?」ということです。

私自身、これらの問いを深く考えたことがありませんでした。それを明快にしていくプロセスに真正面から取り組むことにしたのです。その一方で、手塩にかけて育てた我が子のような会社を、他の方に委ねる決意をしました。

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