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普通の会社員も「模倣と観察」で創造力が磨かれる

2022年05月31日 公開

佐渡島庸平(株式会社コルク代表取締役社長)、佐宗邦威(株式会社BIOTOPE代表)

 

自ら難しい問いを立て、それに答える力を養う

――そのプロセスは、クリエイターの方々に限らず、誰でも取り入れることができるのでしょうか。

【佐渡島】もちろん。「クリエイティブ」はともすると、アートやエンターテインメント業界だけのものだと思われがちですが、すべての産業に創造は起こり得るし、そうあるべきです。でもつい皆さん、無意識に線を引いてしまいますよね。

【佐宗】昔の私もそうでした。自分はクリエイティブな領域は不得手だし、縁がないと。

【佐渡島】それが今や、デザイン経営を教える立場に。非常に珍しいキャリアですよね。何が転機になったのですか?

【佐宗】社会人になって、マーケティングに携わったことです。マーケットの分析力に関しては周囲にも認められていたのですが、人の心に訴えるような創造的アプローチをつくりだす能力がないと痛感し、デッサンを学んだのを皮切りに、ここまで来ました。

【佐渡島】分析力の高いマーケター、つまりある課題にあるパターンを当てはめて解決する、「問題を解く能力」に秀でていたのですね。対して創造力は、「問いを見つける能力」であり、「それを解く過程の能力」です。

【佐宗】私の道のりは、まさにそれを培う過程でした。今もよく中学生や高校生に講演するときに言うんです。「答えを導く力が得意な人間から、問いをつくる力が得意な人間になりました」と。

【佐渡島】でも佐宗さん、もともと解くのが得意だと、「解ける問いを立ててしまう」ことはありませんか? 自分で問いを立てるときですら。

【佐宗】あっ、どうでしょう。それ、なかなか怖い罠ですね。

【佐渡島】漫画家でもときどき、そうなることがあります。つい解決しやすいストーリー展開へと流れてしまうんですね。なので私はよく主人公をとことん苦しめる課題を与えよ、と言っています。

作者が簡単に解ける課題では、読者はワクワクしませんから。作品を破綻ギリギリまで追い込む胆力が、作家には必要です。「超難問」を自分で立てて解く、この繰り返しによって、作品の器、そして本人自身の器も大きくなっていくのだと思います。

 

デザインとアート分野で異なる「問いの立て方」

――多くのビジネスパーソンは、まだ「問いを立てる」のに不慣れだと思います。何を切り口にすればよいでしょうか。

【佐宗】デザインの世界でよく言われるのは「違和感」を掘り下げよう、ということです。違和感の奥には必ず理由があり、その裏側に、より良くできる可能性がある、と。でもこれは、佐渡島さんのおっしゃる「超難問」とはまた違う気がします。

【佐渡島】確かに。それは課題を「見つけて」解くという、問題解決に比較的近いアプローチですね。私たちのコンテンツ制作は、何もないところに「つくる」感覚です。いたずらを仕掛ける感じに近いですね。

【佐宗】アート分野と、デザイン分野との違いかもしれませんね。デザインシンキングは潜在的な不快や不満を抽出して解決するのに対し、「いたずらシンキング」はさらにゼロからの問い。同じクリエイティブでも、ここは相違点ですね。

【佐渡島】デザインの世界は、実用に即した「役立つ」ものづくりが出発点になっているからなのでしょう。おそらく、無駄も生じにくいと思います。我々の場合は、ものすごく頑張って無駄なものをつくってしまうこともしばしば(笑)。でも、「それもまたよし」と思っています。

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