1on1などの面談を採用し、定期的にメンバーとのコミュニケーションを図る管理職も多いだろう。しかし、その面談は形式的で「やった気になっているだけ」ということも……。
元Google Japanで人材開発を担当し、現在も人材育成や人事コンサルティングを行なっているピョートル氏に、部下の本音を引き出し、チームを前向きに動かす方法をうかがった。(取材・構成:林加愛)
※本稿は『THE21』2020年11月号から一部抜粋・編集したものです
部下が主体的に動くチーム作りは、会社と個人、双方に成長を促す原動力だ。在籍していた当時Google社で人材開発に取り組み、現在は組織改革コンサルティングの会社を経営するピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、自身の部下にも日々、そのための働きかけをしている。
「部下が主体性を発揮するにはコミュニケーションが不可欠です。週に1回、部下と対話する1on1の他、日頃のやり取りも重要です。笑顔、何気ない会話、部下のアウトプットに対する『ここまでやってくれたんだ!』などのこまめな承認。中間管理職の皆さん、これを実践なさっているでしょうか?」
これらの働きかけによって確保されるのが、「心理的安全性」。のびのび仕事ができる、本音が言える、仲間を信頼できる、という安心感は、主体性を生む基盤となる。
「とはいえ、『これで部下は必ず応えてくれる』とは言いません。皆さんが直面する現実のやりとりは、きっともっと複雑ですよね。私も、意図と違うように受け取られることなどしょっちゅうです。でも、あきらめないことが大事。失敗と調整を繰り返す、『手のかかる』プロセスなのだと心得ましょう」
手がかかる理由はもう一つある。部下が一人ひとり「違う人間である」ということだ。
「能力もやる気も価値観も、やりたいことも様々。上司は個々の特性に合わせてアプローチしなくてはなりません。ここも同じく、完璧さや即効性など目指さず、トライアンドエラーを重ねましょう」
どんなチーム作りも、出発点は目標設定にある。ここでピョートル氏が紹介するのは、OKRという手法。Googleをはじめ、国内外の大企業で活用されている。
「OKR(Objective and Key Result)、訳すと『目標と主な成果』。おなじみの『KPI』との違いは、自発的な目標設定であることです。
組織が掲げる理念や事業目標を基に、そこに貢献するための自分の目標と、その達成条件としての成果を決めます。自分のやりたいことを、会社の理念・方針に結びつけていくわけです」
上司は節目節目でその設定をサポートし、あとは1on1などで随時、進み具合を共有する。
「前述の通り『やりたいこと』の内容は様々。しかも、個々の『やりたい』の動機にも色々な要素が混じっています。現状の認識度、興味の方向性、さらには無意識的な願望、他のメンバーとの関係性などが複雑に影響するのです。
そこを整理するためにも、何をやりたいか、なぜやりたいのか、を深く聞き取ることが欠かせません。『なぜ?』を何度も重ねていきましょう」
結果、本人の「やりたい」が実は違った、とわかることもある。
「本音ではなかったり、やりたい理由に誤解が入っていたり。例えば、より高い役職を目指す理由が『偉くなったらカッコイイから』だった場合。そう思うのは自由ですが、高い役職には重い責任も伴う、とわかっていない可能性大です。管理業務が増えてその分現場に立てなくなる、ということもわかっていないかもしれません。
そこを指摘し、本人にもう一度考えさせるべきでしょう。そして何より、何のために偉くなりたいのかが大事。『会社のこのビジョンを実現するために、このポジションに就いて、能力をこう生かしたい』と明確に言えないなら、目標としては不十分です」
更新:11月22日 00:05