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50代から捨てるべき「お金の過去の成功体験」

2021年08月25日 公開
2023年02月21日 更新

遠藤洋(投資家/投資コミュニティixi(イクシィ)主宰)

遠藤洋

リスクを恐れ、多くのお金を銀行預金に回している方も多いだろう。しかし、その行為は、預けるだけでお金を増やすことができた過去の成功体験を引きずっているだけだと、投資家の遠藤洋氏は話す。投資を「お金をどこに置くか選択する行為」と定義する同氏に、投資に対する考え方をうかがった。(取材・構成:林加愛)

※本稿は2021年8月時点の情報に基づき、投資に対する考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行うようお願いいたします。

 

物価上昇によって、貯金の価値が下がっている!?

ここ1年、資産運用に対する世間の関心はこれまでになく高まっています。以前は特に関心を持たなかった人が、初めての投資に乗り出すケースが増えているのです。

その背景には、昨年来のコロナ禍があります。外出制限やリモートワークにより在宅時間が増えた結果、消費が減ってお金が余り気味になっています。

それと同時に、10年、20年先の将来への不安感が募っています。「コロナはいつまで続くのか」「会社はこの先も安泰か」といった心配と、目の前の余ったお金とが、「投資デビュー」への流れを作っていると思われます。

一方で、投資に消極的な人もまだまだいます。そうした人はたいてい、「投資よりも銀行預金のほうが安全だ」という考えを持っています。

しかしこれは、安全な考えとは言えません。確かに貯金の「金額」だけを見れば減りはしませんが、同じ金額でもその「価値」は変動するからです。

例えば、昔は100円あれば缶コーヒーが買えましたが、今は120円以上出さないと買えません。物価が上がれば、価値は落ちるのです。大事なのは額ではなく「この額があれば何ができるか」。物価が上がり続けている昨今、貯金額は実質上、目減りしているのです。

 

銀行預金の仕組みを見落としていないか?

「預金主義」の人は、銀行の仕組みについても、意外に見落としがちです。

銀行は私たちから預かったお金を企業や行政に貸しつけますが、そこでは「信用創造」という取り決めにより、預入金額の10倍くらいの額を貸すことができます。

例えば、私たちが100万円預ければ、銀行は1000万円の貸しつけが可能。貸しつけ期間などによって、違いはありますが、利回りは2%くらいあり、その場合20万円が利益となります。

他方、我々預金者の金利はというと0.001%。100万円預けても、利息はわずか10円、残りの19万9990円は銀行のもの。そう考えると「もっとお得な方法」として投資を視野に入れるのが、自然な流れではないでしょうか。

なお、今「投資」と「預金」を対置して話しましたが、実は預金も投資活動の一つです。私の考える投資の定義は、「お金をどこに置くかを選択する行為」だからです。

「ここに置けば増えそう」と考えつつ移動させるのも投資、「とりあえずここなら安全」と銀行やタンスを定位置にするのも投資。しかし、後者が決して安全とは言えないのは、すでに述べた通りです。

漫然と置きっぱなしにするのは、一種の「思考停止」でもあります。

食事で言うなら、調理法や栄養バランスを考えて選ぶといった手間を省いて、毎食プロテインバーで過ごすようなもの。それはどう見ても無謀ですね。資産管理も同じです。日々の健康管理のように、「考えて選ぶ」姿勢が必要なのです。

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