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TVer社長・龍宝正峰氏「放送局から自立、ユーザーが1年で2倍に」

2021年07月07日 公開
2021年07月19日 更新

【経営トップに聞く 第50回】龍宝正峰(TVer社長)

TVer

放送局をまたがったコンテンツを扱うからこその価値を

――TVerの立ち上げの経緯をお教えください。

【龍宝】サービスインが2015年10月だったのですが、その1年半ほど前から、在京キー局5社で検討を始めました。そのときから、私も携わっています(龍宝氏は〔株〕TBSテレビ出身)。

当時、「若者のテレビ離れ」や「インターネットの広告費がテレビを抜く」ということが言わるようになり、「Netflixが黒船として日本に来るんじゃないか」とも言われていて、各放送局とも危機感を持っていたのです。

また、スマホが普及して、動画コンテンツへのユーザーの注目度が上がっていました。違法にテレビ番組が配信されることも頻繁に起きていました。

そのため、各放送局がそれぞれに動画配信サービスを始め出していましたが、先ほど申し上げたように、それでは限界があるし、ユーザーにとっても使いにくいということで、一緒にやろうという話が出てきたわけです。

私自身は、当初は「5社とも参加するのは無理じゃないかな」と思っていたのですが、話をしているうちに、各社の意識が揃っていくのを感じました。

そして、1局10番組、5社で50番組からスタートすることができたのです。

サービスの運営は、放送局の情報をインターネットで発信することを目的に2006年に設立されて、今よりも少ないですが放送局も出資していた、プレゼントキャスト(現・TVer)に、運営費を支払って委託しました(龍宝氏は2016年7月にプレゼントキャスト取締役に就任)。

それを、先ほどから申し上げているように体制変更し、社名もビジネスモデルも変えたのが、昨年7月です。

――サービス開始当初、反応はどうでしたか?

【龍宝】どのくらい観てもらえるのかわからなかったので、半年で100万ダウンロードという目標を立てたところ、1カ月で達成してしまいました。それで、潜在的なニーズがそれだけあったことに気づきました。

ただ、ダウンロードしてみたら50番組しかないということがユーザーから不評でした。以来、コンテンツを増やす努力を続けています。

――動画配信サービスには、独自のコンテンツを作っているところもありますが、御社はどうでしょうか?

【龍宝】制作をするのはかなり先の話になるでしょうが、放送局が持っている、放送していないコンテンツを、独自のコンテンツとして配信することは、どんどんやっていきたいと考えています。例えば、放送していない高校サッカーの試合を、放送局はコンテンツとして持っているわけです。

先日も、ゴルフのサントリーレディスオープンを、朝8時くらいから、フジテレビで生放送が始まるまで、ライブ配信したりしています。

――コンテンツの提供を受ける放送局を増やすことは考えていますか?

【龍宝】構想はしていますが、マンパワーが間に合わない状態です(笑)。

ローカル局のコンテンツで、採算が取れるだけ観てもらえるものがどれだけあるのか、という問題もあるのですが、実際に、キー局を通して提供していただいているローカル局のコンテンツの中にはかなりよく観られているものもありますから、成功事例を増やしたいと思っています。

――その他、今後の取り組みとして考えていることは?

【龍宝】今年の秋から冬になるのではないかと思いますが、放送局が同時配信を始めるときには、TVerを使っていただきたいと思っています。また、来年の北京での冬季オリンピックも、コンテンツの展開のうえで重要です。

今年3月には、初めて「TVerフェス!」を行ないました。2020年に最も観られたコンテンツを表彰するとともに、過去のドラマの配信も行なうものです。3月はドラマの端境期で、TVerからユーザーが離れてしまいやすいタイミングなのですが、それを防ぐことができました。今後も続けていきたいと思います。

「TVerフェス!」の中では「小栗旬ドラマ特集」という企画も行ないました。放送局をまたがって、小栗旬さんが出演されているドラマを配信するもので、放送局単体ではできない、TVerならではの企画です。このような、TVerだからこそできる企画も、もっとやっていきたいと考えています。

今(取材時)は、7月から始まるドラマの宣伝コンテンツ特集をしています。これによって、ドラマへのユーザーの関心を高めることもできますし、違法配信を減らすことにもつながると思います。

サービスの面では、昨年、倍速再生やスマホでの縦型再生を始めました。放送局でコンテンツを作っている方にとっては、あまりやりたくないことだと思いますが、ユーザーからのニーズが高いからです。これからも、ユーザーが望むサービスを展開していきます。

スマホを縦型にして視聴すると、画面の上3分の1ほどで動画を再生するので、下の空いている部分を広告に利用することも考えられます。

テレビのコンテンツは安心・安全だという信頼感は、多くの方に持っていただいていると思います。その安心・安全なコンテンツをインターネット上で再現するプラットフォームがTVerです。プロが作ったコンテンツを、これだけ無料で視聴できるプラットフォームは、世界的に見てもあまりないと思います。これからも、ユーザーに寄り添ったサービスの開発を続け、1人でも多くのユーザーに楽しい時間を届けたいと思っています。

 

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