2021年06月01日 公開
2023年01月19日 更新
――それから10年。共演者やスタッフと緊密に連携しながら、飯尾さんは仕事に邁進している。
「昔も今も、人間関係のストレスはあまり感じません。毎回現場が違って会う人も変わるので、不満が溜まりにくいのでしょう」
――逆に、会社勤めのビジネスパーソンは、ともすれば人間関係で悩みがちだ。
「きっと僕の想像以上に大変な思いをされているだろうと思います。だからアドバイスできることなど無きに等しいですが……一つ言えるのは、仕事するとき『そこにいる人々の目的は共通』だということ。性格が合わなくても、そこを意識すれば乗り切れることも多いのでは」
――だが肝心の仕事で、相手の考えに賛同できないこともある。
「確かにありますね。僕がそのとき気をつけるのは、そのまま言わずに『こういう方法もある』と提案すること。否定するのでなく、こちらもアイデアを出して、比べてもらうのです」
――この知恵は、周囲との情報交換の中で得たものだそう。先輩や仲間たちと「和やかに意見を伝える方法」をしばしばシェアしているのだという。
「そうして分けてもらう知恵の一方、僕の中にずっとあるのは『人間関係で傷つくのは悪いことばかりではない』という思いです。僕は、ひどいことをされたら『早めに答えが出て良かった』と考えます。
相手を信用しきったあとにガッカリするより、ずっといいでしょう?昔も女の子に振られるたび、ショックと同時に『いや、この結末が早くわかってよかった』と思うようにしていました(笑)」
――どんなことにも明るい面を見る飯尾さん。マイナスの気持ちを引きずることはないのだろうか。
「いえいえ、スベったあとなどひどく引きずります。同じくスベった仲間と酒を飲み、いったん立ち直ったはずが、家に帰ってシャワーを浴びてる最中にスベった瞬間がフラッシュバックして『ああっ』と叫ぶ……そんな夜が何度あったかわかりませんよ(笑)」
――と語りつつ、その先に続く言葉はやはり明るい。
「ひどい失敗をしても、半年後に面白トークのネタにできるのがこの仕事の強みです。失敗談を披露し、皆で笑って浄化できるんですね。うまく『発酵』させられるかは問われるところではありますが。
そう思うと、過去の辛い経験やコンプレックスを見事に発酵させている人は本当にすごい、見ていて痛快です。どんなことも笑いにできる、しようとトライする。誰に頼まれたわけでもなく、絶対に必要なポジションでもない僕が、そんな仕事に携われているのはとても幸運だと思います」
更新:12月04日 00:05