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成功しても満たされなかった人が、50代で気づいた「本当にやりたかったこと」

2021年03月26日 公開
2022年10月11日 更新

林浩喜(社会起業大学学長)

林浩喜

過去を振り返って「自分」を知る

自己ミッションを見つけるには、「自分は何者なのか」を考える必要があります。その際にヒントになるのが、過去の振り返りです。人生の浮き沈みをグラフに描く「人生グラフ」などは有効で、これによって自分の価値観やモチベーションの源を探ることができます。

もう一つ、ビジネスでいう「SWOT分析」も、自分を知るためのヒントになります。ただ、あまりネガティブなことを考えても気分が落ち込むので、自分の好きなこと、得意なこと、楽しいこと、喜びにつながることを書き出していくとよいと思います。

私の場合、昔から「人」に興味がありました。起業して一番嬉しかったのは収益の増加以上に、個性豊かな社員達と向き合い、教育し、その成長を見守ることでした。これについては、20年前に受けた取材で、「将来は教育をやりたい」と答えていた記事を最近見つけました。

また、人生で次に取り組むなら、社会貢献をしたいと思っていました。社会貢献への興味は、今振り返ると、大学時代の恩師の影響が大きいと思います。

その方は、社会貢献型の人材を育成するための大学院大学の設立をライフワークにされていました。「金儲けなんてきりがない。一番大事なことは、人をつくることだぞ」という師の言葉は、ずっと胸に残っていました。

このように、私の中には、「教育と社会貢献」という二つの種子が眠っていたのです。それに気づいたのと同じ頃、社会起業家という新しい概念に出会い、「これだ!」と直感しました。

社会起業大学の学長を引き受けることで、自分が持つ起業や経営に関する知見を、社会に役立てていくことができるのではないか。社会起業家を多く世の中に輩出し、彼らが世界で活躍できる環境を作ることが、己のミッションだと確信するに至りました。

 

「組織で生きる自分」が組織を出たら…

多くの人は、かつての私がそうだったように、「組織で生きる自分」がほぼすべてなのではないでしょうか。会社に与えられたミッションに向かって、コツコツと実績を出していくことが評価される世界で生きています。「自分はどう生きるか」などとあまり考えなくていいので、楽と言えば楽です。

しかし、組織で生きる自分は「役割」ですから、多かれ少なかれ、自分を殺さなくてはなりません。自分軸ではなく、他人軸で生きているということです。どんな会社も安泰ではないこの時代に、自分の人生を他人に預けてしまっていいのでしょうか。

しかも、50代を迎えると、子育てなどのライフイベントから解放されて一息ついたら、すぐに定年です。組織から放り出されたとき、己の物差しを持たない人はどうやって生きていけるのでしょうか。

そうなる前に、自分軸を作っておく必要があります。自分軸は、「自分は何者なのか」を内省し、「素の自分」を探求するプロセスを通して作られていきます。

そして最終的には、「組織で生きる自分」を「素の自分」に統合していくことが大切です。もちろん、この二つが最初から一致している人もいるでしょう。しかし、多くの人はこの二つがズレているために、「自分の人生、このままでいいのだろうか」と違和感を覚えているのだと思います。

組織にいながら「素の自分」で生きようとすれば、社内での評価が伴わなかったり、軋轢が生じたりして、難しいと感じるかもしれません。その場合は、ボランティアで社会貢献を始めてみるなど、プライベートで「素の自分」を実践してみてはどうでしょうか。

「素の自分」に収入はなくても、それによって心が豊かになったり、人の役に立てることで自分の存在価値を確認できたりすれば、人は幸せになれます。定年後の活動につなげることもできます。

人は、自分の才能を生かして誰かの役に立ったとき、最も深い喜びを感じるのだと私は思います。そして、「素の自分」として果たすべき役割を認識し、自己ミッションの実現に向けて行動することが、人生における「成功」だと思うのです。

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