2020年09月10日 公開
2020年09月10日 更新
日本のみならずメジャーリーグでも活躍したあの川崎宗則選手と現役社長との異色の対談が実現。日本での実績を捨て、ゼロからの挑戦を成し遂げた川崎選手と、やはりゼロから新しい分野へ挑戦し、海外進出も成し遂げた松本興産の松本社長。ポーツと経営の数多くの共通点が見えてきて、対談は大いに盛り上がった。その様子をレポートする(写真撮影:まるやゆういち)。
松本 私自身、高校まで野球をやっていたこともあり、今日はお会いできて本当にうれしいです。川崎選手にぜひ聞いてみたかったのは、2012年、メジャーリーグへの挑戦のときの話です。やはり、若い頃から海外に憧れていたのですか。
川崎 いえいえ、まったくそんなことはなくて、新人の頃はとにかく、目の前のことで精一杯でした。きっかけは2006年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表として戦い、あこがれのイチローさんと出会えたことです。その後もイチローさんと接する中で、「このすごい人が、どんな場所で、どのように野球に取り組んでいるのかをぜひ知りたい」と思うようになったのです。
松本 日本でのトッププレイヤーの地位を捨てての挑戦は、相当大変だったのでは?
川崎 確かに大変でしたが、行ってよかったと心から思います。それまで僕は、日本の野球しか知りませんでした。でも、メジャーにはアメリカの野球はもちろん、ドミニカやメキシコなど世界中の野球が集まってくる。すると、自分たちが教わってきた野球が絶対ではないことに気づくんです。日本では「バットの握り方はこう」「投げ方はこう」と教わり、違うことをやると怒られる。でも、実は他にも色々な方法がある。世界が一気に広がりました。
松本 これはものづくりの世界でも同じですね。同じものを作るにしても、国によってそこに至るアプローチが全然違います。その中で、日本ではベストだと思われていたやり方が、「実はこっちのほうがいいのでは?」と気づかされたりして、視野が広がる。日本にいると、こういった視点は得られません。当社はすでにタイに進出し、今度はアメリカとメキシコへの進出を考えているのですが、これは外から自分たちを見るという視点が、会社の成長に不可欠だと考えているからです。
川崎 メジャーで僕が一番違いを感じたのが守備でした。日本では「エラーをするな」と教わるんですが、アメリカでは「アウトを取れ」と教わる。だから、アウトを取るため勝負に出た結果のエラーはOK。この違いでプレーは180度違ってきます。「よし、この野球を身につけるぞ」と決意したのですが、なんと1年で入団したシアトル・マリナーズをクビに……。
松本 やはり、そのあたりはかなりシビアなのですか?
川崎 突然、電話があって「You release」ですよ(笑)。その後、トロント・ブルージェイズのマイナーが拾ってくれたのですが、日本で染みついた「エラーをしない野球」が抜けなくて苦労しました。やっと「これだ」というのが見えたのは、9月くらいのこと。ただ、見てくれている人はいて、その後すぐにメジャーに昇格しました。
松本 失敗を恐れたら挑戦なんてできませんよね。当社のような同業者が多い業界では、ある分野で尖った存在になる必要があります。社員にも常に「やるからにはダントツ一番を狙え」と話していますが、そのためには、社員が失敗しても責めず、許容する姿勢が不可欠です。
川崎 松本社長の会社はとても働きやすそうですね。お話をうかがうとやはり、会社も野球も、どれだけ人のやる気を引き出す環境を整えられるかが勝負だと思います。僕がいた福岡ソフトバンクホークスは、選手が気持ちよくプレーできる環境作りにとても力を入れている。それが「常勝球団」と呼ばれる理由だと思います。そもそも、プロ野球に入ってくる時点で、選手はみんな野球がうまいんですよ。あれこれ教えたり、「こうしなさい」と押しつける必要はないんです。
更新:11月27日 00:05