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「ロジカルだけど退屈」なアイデアでは企業が生き残れない時代が来ている

2020年04月20日 公開
2023年02月21日 更新

佐々木 康裕(Takramディレクター&ビジネスデザイナー)

 

答えのない時代に戦えるのは"感性"重視の思考

つまり、今は答えのない時代に突入しているということです。答えがないどころか、問いさえもないとも言えます。

一般的に日本人は選択肢から答えを選ぶような教育を受けてきたため、答えがない問題を解くのは苦手な方が多いという印象を受けます。私自身も、デザインスクールに通うまではそうでした。

しかし、世界の情勢が目まぐるしく変わる今の状況では、自分が柔軟に変わっていくしかありません。

デザインスクールで学ぶ"感性"を大切にする思考法や方法論は、そんな目まぐるしく変わる今の時代に対応するためのツールの一部となります。

 

今世の中を席巻している製品やサービスのほとんどが、10~15年前には存在しなかったものです。現在、世界で一番乗客を乗せているサービスがUber で、世界で一番人を泊めたサービスはAirbnb。世界で一番写真を公開するサービスがInstagram で、世界で一番使われているビジネスチャットアプリはSlack。それらは全て、10年以内に誕生したサービスです。iPhone が誕生してスマートフォンが日本で浸透していったのも、ここ10年の話。

そして、新しい製品やサービスが台頭するにつれ、消え去ったビジネスも多々あります。皆さんが今担っているビジネスも、2025年や2030年には存在していないかもしれません。今勤めている会社も存在しているかどうかは分からないでしょう。

一方で、今、影も形もない製品やサービスが、10年後には皆さんの会社の大黒柱になっている可能性もあります。

このようにビジネスや企業の新陳代謝が早まる中、これまで以上に求められるのは、自ら事業を創出することです。誰かがつくり出すのを待っているのではなく、自らつくり出す人こそが重要な役割を担っていく時代になっていくと思います。

過去の情報の積み重ねである論理思考では、このような新しいものを生み出すことはできません。人間の細かな感性を重視する思考がこの役割を担うのです。

 

不確実性を楽しむのがデザインスクール流

デザインスクールでは、「これは正しいけれど面白くないよね」という言葉を頻繁に聞きました。「ロジカルだが退屈」というのはデザインスクールに入学直後で最も耳の痛かった言葉です。

数値やビジネスモデルを基にロジカルに最適解を導き出すことをビジネスの場では求められてきたのに、デザインスクールでは正しいだけではダメだと一刀両断されました。

デザインスクールの授業で、例えば、「Amazonの新規事業を考える」という課題が出ると、最後にプレゼンをして評価をしてもらうまで、ずっとモヤモヤと悩み続けることになります。従来の事業を改善する、という積み上げ型のスタイルでは、考えるための「足場」が多数あります。

一方、まったく新しい事業を考える際は、そうした、よって立つ足場がなく、大海原に一人投げさられるような気持ちにもなります。こうした可能性が無限にある状態は、人をワクワクさせると同時に、不安にもさせます。何も道具がなければ、目の前に広がる広大な可能性空間を前に足がすくんでしまうでしょう。

しかし、デザインスクールで学ぶようなフレームワークを使うことで、こうした不確実性に対しても無用な恐れを抱かずに新規事業に取り組むことができます。

皆さんには、そのモヤモヤした時間を楽しんでいただきたいと思います。すぐに見つかる答えは、おそらく他の誰かがすでに出している答えです。

安易な結論に飛びつかずに、ツールやフレームワークを駆使しながら粘り強く考えていれば、いつか他の人が着眼しないようなアイデアの芽を見つけられるのだと私は信じています。

 

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