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仕事で迷ったら正しいかどうかではなく、「好き嫌い」で選べ

2019年12月23日 公開
2024年12月16日 更新

楠木建(一橋ビジネススクール国際企業戦略教授),伊藤羊一(Yahoo!アカデミア学長)

第3回 「好き」を仕事にしなくちゃダメですか?

「好きなこと」「やりたいこと」を仕事にする働き方が注目されている。でも、夢がない、明確なキャリア目標もない。そんな自分はダメ人間なのか――? 天才でもナンバーワンでもオンリーワンでもない、フツーの人が直面する仕事の迷いについて、「好き嫌いの仕事論」を重視している一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と、Yahoo!アカデミア学長として次世代リーダーの育成を行ない、新刊『やりたいことなんて、なくていい。』を上梓した伊藤羊一氏にお話しいただいた。

取材構成 野牧 峻

 

嫌いなことがわかった後に好きなことがわかる

――楠木先生の仕事観が形成されてきた経緯、とても面白いです。伊藤先生はいかがですか?

 伊藤 これ自分のライフラインチャートなんですけど……。

 楠木 面白いですね。

 伊藤 高校のときにテニス部をクビになって、彼女にフラれたっていうことでマイナスに陥って。そこから、いわゆる不良ですね。大学へ行っても、不良のまんま。

 楠木 『ビー・バップ・ハイスクール』みたいな感じですか?

 伊藤 もうちょっと後になりますけど、『ビー・バップ・ハイスクール』は読んでました(笑)。

 楠木 なるほど、なるほど。

 伊藤 ああいう不良って、屋上でタバコを吸うんですね、授業をサボって。

 楠木 伊藤さんは、もうちょっと「カリフォルニアの不良」というイメージですかね?

 伊藤 そうですね。あとは、RCサクセションの『トランジスタ・ラジオ』的な感じです。

 楠木 なるほど、なるほど。

 伊藤 というふうにやってきて、大学のときもう何もやってないんですね。斜に構えて。何もやってないから、社会で大人と触れないから、大人とのコミュニケーションが怖いわけですよ。そのまま一応社会人にはなれたんですけど。楠木さんの今のお話を聞いていて、社会人になるとか、ならないとか、会社へ入るとか、入らないとか、好きとか、嫌いっていう選択肢自体が俺にはなかったなって。

 そうするとひとまず会社に入っちゃうんですよね。怖いんで。でも、会社に行ったら人と何かやるのって実はあまり得意じゃなくて。それでどんどん、どんどんダウンして、26歳のときに会社に行けなくなっちゃうんですね、うつになっちゃって。

 そこから、色々な人に教えられて、ここまで来た感じです。恐らく、楠木さんは高校とかに経験していたことを私は社会人になってから経験していますね。

 楠木 僕はというと、「十五、十六、十七と私の人生暗かった」っていうほうですね。本当に嫌でした。やっぱり当時はミッドな昭和なので、中高生なんていうと社会が学校にしかなくて。その社会でのアイデンティティが部活で決まっていた時代ですから。だいたいスポーツですよね。とにかく嫌でしたね、あれは。

――確か、柔道部も辞められたというふうに……。

 楠木 そうそうそう。ホントに向いてない。だから、母校の高校に呼んでもらって講演する機会をいただいたときに「私はこの学校におりましたが、1つもいいことはありませんでした」って言いました。横で先生が嫌な顔していましたが、本当にそうだったんで。

――正直ですね(笑)。

 楠木 ええ。「でも皆さん、ご安心ください。ずっとそれが続くわけじゃありませんので」っていうメッセージを後輩に伝えました。そしたら、「なんてことを言うんだ!」と怒られましたね。

――勇気をもらった生徒も多いと思いますが。

 伊藤 高校の頃は暗かったですね。私の場合は大学もずっと幸福度が落ちて社会人になっても下げ止まりしませんでしたが。

 楠木 長いですよね。

 伊藤 長いんですよ。

 楠木 とくに25歳のころの6年とか7年は、本当に長いですからね。

 伊藤 そうなんですよ。そのときに、嫌いなことはやらないほうがいいよなとさえも思えなかった自分がいるなって。楠木さんとは、そこの違いがあるなと感じます。

 楠木 そうですね。ただ、やっぱり人間は社会的な動物なんで、私の場合は会社に入らなくても、アカデミックな社会に入ることになりました。そうすると、「こういうものだからね、君」と「こんなこともできないなんて話にならないよ、君」って言われます。面白くはありませんでしたが、「ああ、そうですか」っていうことで、目の前のやらなきゃいけないことをしばらくやっていました。すると、2回目の事後性の話にも関わると思いますが、「ほとほと嫌だ、なぜならば~」というのがよくわかって「じゃあ、こういうことが好きなんだ」っていうのが見えてきます。こういう順番だと思うんですよね。

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プロフィール

楠木建(くすのき・けん)

経営学者、一橋大学PDS寄付講座・シグマクシス寄付講座特任教授

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部専任講師、同助教授、ボッコーニ大学経営大学院客員教授、一橋ビジネススクール教授を経て 2023 年から現職。著書に『楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考』、『楠木建の頭の中 仕事と生活についての雑記』、『経営読書記録(表)(裏)』(いずれも日本経済新聞出版)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)、『逆・タイムマシン経営論』(日経BP、共著)、『「仕事ができる」とはどういうことか?』(宝島社、共著)、『室内生活 スローで過剰な読書論』(晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる 仕事を自由にする思考法』(文藝春秋)、『戦略読書日記』(プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)ほか多数

伊藤羊一(いとう・よういち)

武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 学部長

Musashino Valley 代表、Voicyパーソナリティ

アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、ウェイウェイ代表として次世代リーダー開発を行う。代表作「1分で話せ」は70万部のベストセラーに。

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