2019年12月09日 公開
2023年02月24日 更新
写真撮影:永井 浩
金融、物流、マーケティング、さらには教育と、まったく異なる分野でキャリアを重ね、グロービス経営大学院客員教授として教壇にも立つ伊藤羊一氏。著書『1分で話せ』は35万部のベストセラーになった。そんな伊藤氏が実践してきた「わらしべ長者的キャリア」とは?
※本稿は、伊藤羊一著『やりたいことなんて、なくていい。』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
私のキャリアは、must を積み上げ、その場その場で「たまたまやらなければならないこと」をやってきた結果、なんとなく形になったもの。
これが、「わらしべ長者的キャリア」の本質です。
ただ、「その時々で与えられた仕事に全力を尽くせ」「そうすれば勝手に次のステップは見えてくる」と言うだけでは、あまりにも漠然としたアドバイスですよね。
そこで、私が経験から学んだ「わらしべ長者的キャリア」を築くための3つの極意を説明していきます。
まず当然ですが、仕事のクオリティは高くなくてはいけません。
プロフェッショナルの仕事として、相手が認めてくれる、顧客のためになる、一緒に仕事をする人の成長につながる……そういう仕事をしよう。
プロフェッショナルとして、恥じないスキルを持ち、アクションをしよう。
このような意識がなければ、そもそも成果を出すことは難しいでしょう。
クオリティを上げるために、私の経験から言えることは、繰り返しになりますが、とにかく現場でリアルな経験を積み上げること。
その上で、もう1つ重要なのは、その貯まっていったリアルな経験を抽象化、ノウハウ化して人に伝える訓練をすることです。
もちろん、本を読んだり人の話を聞いたりして、はじめからきれいなノウハウを学ぶことも悪くはありません。ただし、それだけでは、使えるノウハウにはなりません。
やはり重要なのは実践を通しての経験。
そして、その自分の経験を、うまく解釈して言語化し、人に伝えていくと、それはとても優れたノウハウになっていくのです。
経験を積み、自分の経験に基づいて語るならば、そのコンテンツのレベルは、自分の経験を積めば積むほど、高まっていくわけです。
アウトプットを意識して、徹底的にインプットすると言っても良いかもしれません。
私の場合で言えば、プレゼンテーション、リーダーシップ開発。
いずれの場合も、リアルな事例に大量に触れる機会に恵まれました。
事例を積み重ね、それを抽象化してコンテンツにしていくことでクオリティがどんどん上がっていったのです。今でもどんどん、成長している実感があります。
そしてこれは、別に私に限らず、誰にでもできることのはずです。
なぜなら、誰にでもリアルな現場、すなわち目の前の仕事があるから。そこで多くの事例を経験しながら集めていけばいいのです。
コンテンツのクオリティを上げるということは、言い換えると、「現場に触れまくる」ということでもあります。
ただし、一生懸命仕事をして、現場で経験を積みまくっていても、事例を集めたところで終わってしまっている、という人が意外と多いものです。
そんな人は、「So what?」と自分に問いかける習慣を身につけましょう。
「So what?」とは、「それで?」とか「つまり、どういうこと?」という意味。
経験を積んだ上で、自分自身に「それで?」「つまり、どういうこと?」と問いかけることで、自分なりの一般論、教訓を導く機会を意識的に設けるということです。
私は、プレゼンテーションにしても、リーダーシップ開発にしても、人前で話す機会、つまりアウトプットの機会を繰り返す中で、この「So what?」を自分自身に問いかけるようにしました。
「So what?」と自分に問いかけ、たくさんある事例を考え直し、「これとこれは同じことだ」「この事例とこの事例からこんな教訓が引き出せる」といった一般化をすることによって、他人に伝わるコンテンツになります。
まず、現場に触れまくって経験、事例を自分の中に蓄積する。そして、アウトプットの機会を設けて「So what?」で経験を一般化し、コンテンツ化し、他人に伝える。さらに現場に触れて、経験し、「So what?」でコンテンツのクオリティを上げていく。
クオリティを高めるためには、このサイクルが必要不可欠です。
アウトプットの機会は、人に教える、講演や勉強会での発表などに限らず、同僚との対話でもいいでしょう。
何かしらの形でいいので、このアウトプットとインプットのサイクルを回していくことが、最終的な仕事のクオリティを上げる上でポイントになるのです。
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更新:11月24日 00:05