2019年10月18日 公開
2020年01月15日 更新
元日産自動車北米副社長。BMWジャパン、クライスラージャパンのトップ。そして早稲田大学ビジネススクール教授という経歴を持つ著者が、自身の経験と国内外の豊富な情報をもとに書き上げた『「名経営者」はどこで間違ったのか ゴーンと日産、20年の光と影』が発売される。
ゴーン氏は確かに私欲に走ったかもしれないが、経営者としての優秀さは疑いない、と多くの人は思うだろう。だが、著者の法木秀雄氏によれば、「それについても大きな疑いがある」という。経営者としてのカルロス・ゴーン氏の本当の評価とは?本書から抜粋・再編集してお伝えする。
ゴーン氏の日産改革のうち、文句なしに素晴らしいといえるのは最初の5年間だけで、後半15年間はむしろ「刈り取り」に重点が置かれ、日産の潜在能力の向上を阻害してきた。それが、私の見立てである。
具体的には、コストダウン及び、ひたすら販売台数を求めたことによる弊害だ。EV(電気自動車)への前のめりな投資による損失。短期利益志向の行きすぎによって生じた品質の低下。日本人社員の軽視。そして、権限の集中による問題などが、この間一気に噴出してくることになる。
そのターニングポイントが、2005年よりルノーのCEOを兼務することになったときだろう。日産の経営にかける時間が相対的に減ったことはもちろんだが、ルノーの経営が思いのほかゴーン氏の足を引っ張ったことが、日産にも負の影響を与えることになっていった。
日産からの利益はルノーの経営改善に多大な役割を果たした。日産との技術提携により、ルノーの技術力にも改善が見られたはずだ。ならば、日産、ルノー双方がアライアンスの効果を最大限に発揮して業績を伸ばすことができたのか。答えは否である。
皆さんは驚かれるかもしれないが、「名経営者」の名をほしいままにしていたゴーン氏によるルノーの経営は、まったくと言っていいほど、うまくいっていなかったのだ。
更新:11月25日 00:05