2019年12月18日 公開
2023年02月24日 更新
独自の「中川メソッド」によって、筋力と脳の両面からの視力回復方法を研究・実践する中川和宏氏は、目は脳からの命令でものを見ており、見えなくなることはストレスや集中力の低下にもつながると指摘する。
しかし逆に言えば、脳に着目すれば見る力すなわち視力を回復することもできるという。現代人の視力事情と、自分でできる視力回復トレーニング法について教えていただいた。(取材・構成=林加愛)
※本稿は『THE21』2019年12月号より一部抜粋・編集したものです。
現在、私たちの目はかつてない危機にさらされています。デジタル社会のため、現代人は目を絶えず酷使し、疲労させているからです。ビジネスパーソンの方々も、仕事中はパソコンやタブレットを凝視し、仕事を離れている間も、始終スマホの画面に見入っているでしょう。
こうした生活習慣は世代や国籍を超えて浸透し、目に悪影響を与えています。「2050年には世界人口の半数近く(約50億人)が近視になり、最大10億人に失明のリスクがある」という研究データもあるくらいです。
国外ではすでに、対策を講じる動きが出ています。シンガポールでは国費を投じて研究・調査がなされ、中国でも学校の授業の合間にアイケアやトレーニングを取り入れ始めています。ところが、日本はいまだにまったくの無策。視力の低下は年々深刻化しています。中でも顕著な傾向は、近視の強度化と、それに伴う近視の合併症、すなわち緑内障・白内障・黄斑変性症・網膜剥離などの増加です。
とりわけ、緑内障を発症する人は多数で、しかも低年齢化しています。30代、40代での発症はもはや珍しくありません。老眼にも低年齢化傾向が見られます。私の元を訪れる方々の中にも、30代や20代、時にはなんと小学生の「老眼様症状」が見られることもあります。
これらの症状は言ってみれば、いずれも老化現象です。老化とは、酸化でもあります。人体は、摂取した栄養に酸素を結び付けてエネルギーに変換します。エネルギーが産生されるとき、同時に活性酸素も発生し、組織の老化を招くのです。
この現象にもっともさらされやすいのが目です。人間が1日に使うエネルギーの半分は、目と脳で消費されるからです。
老化の速度が上がっている現代人の目では、水晶体の弾力低下、それを動かす筋肉・毛様体筋の筋力低下、硝子体の液状化などが起こっています。
その中で、40代ビジネスマンによく見られるのが「近視かつ老眼」という症状。水晶体は、近くを見るとき厚く、遠くを見るとき薄くなりますが、その調節が双方利かなくなってしまうのです。
この変化は、脳にも悪影響を与えます。見ることは、脳の仕事でもあるからです。そもそも、ものを見るのは「目」ではありません。目は単なる受容体であり、その情報を認知しているのは脳です。ですから、目からの情報がぼやけると、認知能力もぼやけます。集中力や記憶力が低下する他、視覚情報をうまく受け取れないストレスが、やる気の低下や、うつ症状を引き起こすこともあります。
更新:11月25日 00:05