2019年07月19日 公開
2022年11月02日 更新
経営コンサルタントといえばハードワーカーというイメージがあるが、マッキンゼーなどで活躍した世界的コンサルタント・大前研一氏は30代の頃から計画的に長期休暇を取り、数多くある趣味を楽しんでいる。ビジネスパーソンが休みを取る意義とは?(取材・構成:山口雅之 写真撮影:永井浩)
※本稿は『THE21』2019年7月号より一部抜粋・編集したものです
安倍政権が成立させた働き方改革関連法がこの4月より順次施行されており、そこには残業時間の罰則付き上限規制や年5日間の有給取得(消化)の義務化などが含まれている。しかし、いきなり「労働時間を減らせ」「もっと休め」と言われても、いったい、どうすればいいのだろう。
「確かに、日本人は休み方が下手だ。例えば夏休み。米国人のホワイトカラーは、6月から9月中旬までの好きな時期に、1週間単位で休暇を取って家族でバケーションに出かける。
勤勉と言われているドイツ人も、部課長クラスになるとイタリア辺りに一軒家を借りて、そこで優に1カ月間は家族と過ごす。一方、家を貸したイタリア人は、その間、スペインで家を借りて、家賃の差額で暮らす。スペイン人はモロッコやポルトガルに移動して、やはり同じように、夏の間、バケーションを楽しむのだ。
中国、台湾、香港、シンガポールなどでも、休みの取り方は欧米化しつつある。しかも彼らの中の富裕層は、滞在先に1泊15万円以上する高級リゾートホテルを選ぶなど、旅先では実に気前が良い。
これに対し日本人は、家族旅行といっても、いまだに1泊2日がせいぜいだ。それも、ゴールデンウィーク、年末年始、お盆に皆が集中して休むので、その時期は道路も観光地も大混雑し、とてもリフレッシュどころではない。
だからといって、休み方にまで国が口を出すのは、私に言わせれば余計なお世話だ。どういう休み方をするかは、本来、個人がライフプランに応じて、自由にデザインするものなのである。例えば、有給休暇が15日認められているのなら、それを目いっぱい使い、さらに10日、無給の休みを取る。そうすれば、日本人だって欧米人のようなバケーションが可能なのだ」
――しかし、現実には、自分の都合で有給休暇を取るのは気が引けるという人が多いのではないだろうか。
「世界の有給休暇消化率を見てみると、ブラジル、フランス、スペイン、香港は100%。イタリアや米国も70%以上。これに対し、日本は50%と極端に低くなっている。
有給休暇というのは労働者の権利なのだから、『ここは休もう』と決めたら、理由の如何にかかわらず、堂々と休んでいいはずなのである。それなのに休めないのは、皆が働いているときに休むのは良くないことと思い込んでいるからだ。
さらに、『自分だけでなく、上司も同僚もそう思っているに違いない』と勝手に忖度して、身動きが取れなくなってしまっている。周囲にどう見られているかばかりを気にして、肝心の自分の人生を生きていない。そういうムラ社会のメンタリティを持った人が、日本の会社には実に多い。
自分の仕事を疎かにしたまま、『有給休暇は権利だから』と休みを取ったら、それは顰蹙も買うだろう。しかし、人一倍働き、ちゃんと結果も出しているという自負があるのなら、何も遠慮することはないはずだ。
それに、毎日出社して長い時間働いているが生産性の低い社員と、しっかり休んで高いパフォーマンスを発揮してくれる社員を比べたら、どちらを会社は高く評価するかは、火を見るより明らかではないか。
日本のホワイトカラーの仕事は定型業務と非定型業務が『霜降り肉状態』になっているので、『自分の仕事は終わった、あとはよろしく』と言いにくいところは確かにあるが、それでも、会社に居続けることが価値になると思ったら大間違いだ」
更新:11月25日 00:05