78年、毛沢東の後を継いだ鄧小平は、ソ連型計画経済の失敗を認め、米国型市場開放へと舵を切りました。「改革開放」政策です。米国や日本をはじめとする外国資本の積極的な対中投資により、80年代の中国は急激な経済成長を遂げたのです。
鄧小平は、非常に賢い指導者でした。外資導入による経済発展を最優先させるため、西側諸国との平和共存を外交政策の基本方針とし、協調外交を徹底して演じたからです。
89年の天安門事件で西側諸国から非難と制裁を受けたときも、ソ連や東欧の共産主義体制が崩壊したときも、鄧小平はアメリカを決して挑発せず、友好関係を維持し続けました。
現在、中国が虎視眈々と狙う南シナ海の覇権樹立についても、鄧小平の時代に立案された「列島線」概念をもとにしています。
しかし、彼はその野望を決して見せることはありませんでした。中国が真の実力を蓄えるまでは、じっと待つのが最善の策と考えたのです。鄧小平が貫いた外交姿勢は、「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ばれています。「能ある鷹は爪を隠す」といった意味です。
その後も、江沢民、胡錦涛と続く歴代の指導者はアメリカとの友好関係を演出してきました。
潮目が変わったのは、21世紀、習近平政権になってからです。
GDP世界第2位の実力を蓄えた中国は、露骨にアメリカへ覇権争いを仕掛けます。習近平政権が推進する「一帯一路」構想では、アジアやアフリカ、ヨーロッパの国々に緩い融資条件でインフラ投資を行ない、返済不能となった国の鉄道や港湾を差し押さえています。まさに、「現代版帝国主義」と言えるでしょう。
アメリカにとって最大の脅威はロシアではなく、中国になったのです。この「米中冷戦」の終着点は、①中国の全面降伏、②習近平の退陣、③中国共産党体制そのものの転覆、のいずれかでしょう。
現在ナンバー2である穏健派の李克強首相ならもっと賢くやるはずですが、習近平が終身国家主席に就任した今、選択肢②は消えつつあります。
経済力を過信して米国トランプ政権の「虎の尾」を踏んでしまった習近平の中国は、「米中冷戦」にいつまで耐えられるのか。今後の動向に注目です。
更新:11月22日 00:05