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中国の「一帯一路」構想は 帝国主義の再来か

2019年06月26日 公開
2022年03月02日 更新

茂木誠(駿台予備学校世界史科講師)

日本人が知らない「国際ニュースの核心」

激動の国際情勢を、一段深く理解したい。そのためには、世界史の知識が欠かせない。この連載では、世界史を大きなストーリーとして捉える見方でおなじみのカリスマ塾講師・茂木誠氏が、現在の国際情勢の歴史的背景を、キーワードで解説する。

 

「ソ連(ロシア)の孤立」で成り立ってきた米中蜜月

 米中対立の長期化が懸念されています。しかし両国は昔から仲が悪かったわけではありません。中国を植民地支配しようとした西欧列強や日本とは違い、一度も中国を侵略しなかった唯一の大国がアメリカなのです。

 

 ただ一度だけ、中国がアメリカと敵対関係になったことがあります。1949年に中国が共産化し、朝鮮戦争で北朝鮮側についたときです。朝鮮戦争が休戦した後も、米ソ冷戦による共産圏(ソ連・中国・北朝鮮)との緊張状態は続き、ベトナム戦争を引き起こします。

 ところが72年、ニクソン大統領が北京の毛沢東を訪問したことで、米中関係は劇的に改善されます。当時、ニクソン大統領は、ベトナム戦争の泥沼化に苦しんでいました。共産主義の拡大を招く懸念から、引くに引けない状況だったのです。

 一方で、長大な国境線を共有するソ連と中国は、領土問題という火種を抱えていました。

 そこでニクソン大統領は、米中が結ぶことでソ連を孤立させようと画策しました。米中和解の最大の狙いは、中国とソ連の間に楔を打ち込み、ソ連をけん制することにあったのです。

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著者紹介

茂木誠(もぎ・まこと)

世界史講師

東京都出身。駿台予備学校、ネット配信のN予備校にて、東大・一橋大など国公立志望者向けの世界史講座を担当する。歴史上の人物が憑依したかのようなドラマチックな講義スタイルで、学生からの支持も厚い。各種受験参考書に加え、『ジオ・ヒストリア』(笠間書院)、『「日本人とは何か」がわかる日本思想史マトリックス』(PHP研究所)など著書多数。近年はYouTube「もぎせかチャンネル」にも注力する。

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