2019年06月25日 公開
2023年03月02日 更新
ただし、ビジョンの話をするためには、お客様企業のトップと商談をする必要があります。担当者レベルでは、業務やオペレーションに関心が向いているので、現場の課題の話になりがちだからです。
トップのアポを取るのは難しいと思っている営業職が多いのですが、実際にやってみれば、そんなことはありません。いくつかコツがあるので、それを踏まえて挑戦してください。
コツの一つ目は、「商品のご提案に先立って、御社の経営についてのご意向をうかがいたい」というように、目的をしっかりと伝えること。
「ご挨拶にうかがいたい」と言う人が多いのですが、これが一番良くありません。忙しい経営者にとって、「ご挨拶」ほど役に立たないものはないからです。
また、現場の担当者を味方につけることも重要です。担当者に提案する内容がトップの意向とズレないよう、先にトップの意向を聞いておいたほうが、担当者にとっても仕事がしやすいはず、というように、メリットを伝えて理解してもらえれば、トップのアポを取るのに協力してくれるはずです。
トップとの商談ができることになったら、その場では何を話せばいいのか。冒頭で「御社のビジョンはなんですか?」と聞くのは唐突かもしれません。
お勧めは、ビジョンについて話してもらえるよう、水を向ける質問をすることです。そこで有効なのが、相手のこれまでのキャリアについて聞くことです。
「経営者は孤独だ」とよく言われるように、経営者がキャリアやビジョンについて話しても、共感しながら聞いてくれる相手は、実はほとんどいません。聞いてくれる人が現れたら、嬉しく感じるものです。
キャリアについて聞いていると、過去から未来へと話が進みますから、話が進むにつれて、徐々に現在の状況や課題がわかってきます。そこで「それなら弊社の商品が……」と言いたくなっても、気持ちをグッと抑えましょう。そして、「今、抱えていらっしゃる課題を解決できた先に、どんな会社を目指されているのですか?」「解決するときに、大事にしたいポイントはなんですか?」というように、できるだけ話の次元を上げる質問をするのです。
そこまで話を聞いたうえであれば、相手にとって、提案に耳を傾けない理由はほとんどなくなっていることでしょう。
《取材・構成:池口祥司》
《『THE21』2019年6月号より》
更新:11月22日 00:05