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誰でも数学が得意になる、3つのトレーニング方法

2019年03月18日 公開
2023年03月10日 更新

西成活裕(東京大学先端技術研究センター教授)

数学者も本当は「数字」が苦手!?

細かい数字を見るだけで頭が痛くなるという人も、諦める必要はありません。なぜなら、数学者の多くは細かい数字が苦手だからです。

お金の計算でも、数学者は細かいことを気にしません。普段、「n次元で」という世界で思索している人種なので、「次元が合っていたらいい」「桁が間違っていなければいい」と鷹揚に構えている(笑)。

もちろん必要に迫られれば、数学者だって水も漏らさぬ緻密な計算をすることは可能です。しかし、数学で重要なのは、細かな計算力より、「ざっくり把握する力」です。ですから数学者は普段、細かな数字にこだわらない人が多いのではと思います。

一般の方が数学的思考を身に着けるときも、「ざっくり把握する」ことから始めてはいかがでしょうか。

たとえば買い物するときに、細かい計算をすることなく、ざっくりおつりを計算します。「さっき端数を切り捨てたから次は切り上げよう」とうまく辻褄を合わせれば、数学的思考を磨くいい訓練になります。

数学的思考力をつけるには、「フェルミ推定」や、私が考案した「言葉つなぎゲーム」もお勧めです。以下に紹介しますので、ぜひ参考にして、チャレンジしてみてください。

 

西成氏お勧め!「数学的思考力」トレーニング法3

1 だいたいの計算

実際には1の位まであるような細かい数字をそのまま計算するのではなく、端数を四捨五入するなどして、丸めた形で把握する。
「たとえば『3+8』の正解は『11』ですが、だいたいの計算では『だいたい10』」が正解です」(西成氏)
この力が身につくと、予算や人員の配分など、細かい計算をしなくても瞬時に判断できるようになる。また、現場から不正やミスでおかしな数字があがってきたとき、裏づけとなる現場のデータがなくても異常に気づくことができるだろう。

 

2 フェルミ推定

実際に調査して全容を明らかにすることが困難な数量を、論理的な概算によって導き出す。
たとえば「東京都内の家庭に今、テレビは何台あるか」という問題は、調査するのは難しい。しかし、「東京都の人口は約1,300万人」、「昔は1世帯4人家族が標準家族だったが、単身世帯も増えたので、平均1世帯2人としたら、東京に650万世帯ではないか?」、「中にはテレビを持たない世帯もあるが、2台以上テレビを持っている世帯もあるので、1世帯に平均1台とする」。「よって約650万台」と推論を重ねて結論を導く。
かつてマイクロソフトは就活試験で「バスにゴルフボールが何個入るか」という問題を出したが、これはフェルミ推定の典型的問題といえる。

 

3 言葉つなぎゲーム

箱に雑多な単語を書いた紙を入れて、二つの単語をランダムで選ぶ。一つの単語から「AはBだ」というように文章を作成して、「BはCだ」、「CはDだ」と数珠つなぎで文章を繰り返しつくり、最終的にもう一つの単語にゴールできればゲームクリアだ。
「間に挟む単語が1個では、クイズのようなもので、頭のトレーニングになりません。また、長すぎせると難易度が高すぎて続かない。間に挟むのは3個がちょうどいい。半年間、毎日続ければ、論理的に思考を展開する力が身につきます」(西成氏)

 

<『THE21』2019年3月号より>

 

著者紹介

西成活裕(にしなり・かつひろ)

東京大学教授

1967年、東京都生まれ。東京大学先端科学技術研究センター教授。東京大学工学部卒業後、同大大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。博士(工学)。ドイツのケルン大学理論物理学研究所などを経て、現職。専門は数理物理学、渋滞学。著書に、『渋滞学』(新潮選書)、『とんでもなくおもしろい仕事に役立つ数学』(角川ソフィア文庫)など。

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