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40代が脳の曲がり角...作業療法士がすすめる“記憶力を高める睡眠習慣”

2017年08月02日 公開
2023年09月15日 更新

菅原洋平(作業療法士)

脳
イラスト=ゆづきいづる

記憶力アップや脳の活性化のためには生活習慣が重要になる。中でもとくに大事なのは、勉強の効率や集中力に大きく関わってくる「睡眠」の取り方だ。

しかも、作業療法士の菅原洋平氏によれば、「記憶は眠っているあいだに定着する」という。正しい眠り方について詳しくうかがった。

※本稿は、『THE21』2017年7月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

記憶が定着するのは「睡眠中」だった

睡眠は、疲労回復や体調の維持に必要なだけでなく、体験した出来事や学習した記憶を整理し、定着させる役割も果たしています。

食べ物が胃で消化されてはじめて栄養になるように、情報もただ脳に溜め込むのではなく、消化しなければ使える情報にはなりません。脳で言えば「睡眠」が、「消化」にあたるのです。

では、睡眠は記憶にどのように関わっているのでしょうか。睡眠はその深さや脳波の状態によって4つの段階に分けられます。

眠りはじめのまどろんでいる状態(睡眠段階1から、次第に睡眠感を伴うようになると、浅い眠り(睡眠段階2)に入ります。眠り始めて30分を超えたあたりから、デルタ波という脳波が出現し、ぐっすり眠っている状態(睡眠段階3・4)になります。

この深い睡眠のときに、昼間に学習したことが脳内でリプレイされ、習得されます。つまり、記憶の定着には、深い睡眠が重要な役割を果たしていると言えます。

深い睡眠は、実は意識して取ろうとしなければ、十分に取ることができません。

眠りは、睡眠段階1から4へと徐々に眠りが深くなったあと、4から1へと浅くなり、最後に睡眠中に眼球が急速に動いている状態の「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りが出現するというサイクルを繰り返します。

最初のサイクルで、睡眠段階3、4の深い睡眠が多く出現し、3回目以降からは、睡眠段階1、2とレム睡眠の浅い眠りが大部分を占めるようになります。

つまり、いかに眠りはじめで深く眠るかが重要なのですが、ここで注意したいのが体温コントロールです。深い眠りは、体の内部の体温である深部体温が下がることで訪れます。この勾配が急になればなるほど、深い睡眠が得られるのです。

深部体温を急降下させるには、睡眠1時間前の入浴が効果的です。入浴によって上昇した深部体温を下げるために、身体の表面上に熱が放出されるため、深部体温の急勾配のリズムを作りやすいのです。

 

40歳を超えると深い睡眠が減っていく

このように、深い睡眠は、意識しないと十分に取れないのですが、そればかりか、40歳を過ぎると徐々に得にくくなるという側面も持ち合わせています。

その理由は2つあって、1つは運動量の減少や基礎代謝の低下です。深い睡眠を得るには深部体温を下げなければならないと言いましたが、運動量の減少による筋肉の衰えや基礎代謝の低下から、深部体温を上下させるリズムを作るのが難しくなっていくのです。

もう1つは、記憶に関係しています。睡眠中の脳は情報処理を行なっていますが、若い年代ほど初めて経験することが多いため、脳の学習量も増え、情報処理に時間がかかります。

一方、年齢を重ねて経験則が身についてくると、情報処理にそれほど時間がかからなくなり、深い睡眠が減っていくというわけです。かといって、こうした自然の成り行きに任せて深い睡眠を減らしてもいい、というわけではありません。

寿命が今より短かった時代は、それでもよかったのかもしれませんが、60歳や70歳まで現役で活躍することを考えるなら、40歳を過ぎてからも深い睡眠を意識して取ることが大切です。

 

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