2018年12月25日 公開
2023年03月13日 更新
施設については、有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)、サービスつき高齢者向き住宅(サ高住)、介護型ケアハウスなどがあります。
また、認知症の方を対象としたグループホームや、介護と医療の両方が必要な方向けの介護医療院などの施設もあります。このうち、老後資金に余裕がないという方にご紹介することが多いのが、介護型ケアハウス(軽費老人ホームC型)です。
介護型ケアハウスは、部屋は個室でトイレはついてますが、お風呂、食堂は共同で、食事の提供サービスがあります。月額の費用は食費や家賃、光熱費、介護費用を含めて10〜20万円程度ですが、所得による軽減措置があるので、同じ施設でも費用は異なります。特養と異なり、要介護1からの入居が可能な点も安心で、スタッフによる介護サービスが受けられます。月々の出費は、年金の範囲内あるいは、年金額に数万円程度の+αで抑えることが可能です。
同様に特養も、比較的低コストで入居できます。最近はユニット型といって個室タイプのものが増えており、多床型(4人部屋)と比べると割高ですが、所得が低い方には軽減措置があります。特養入居者の約3分の2が、軽減措置を受けています。
一方、有料老人ホームは、入居一時金が0〜1億円超、月額利用料も10万〜30万円程度と、施設によって大きく幅があります。有料老人ホームには介護型と住宅型があり、介護型は施設に介護スタッフが常駐しています。住宅型の場合は、要介護状態になると、外部の介護サービス事業者からサービスを受けることになります。
一般的に、首都圏や関西圏には高額の有料老人ホームが集中しており、安価なところを探すのはかなり大変です。
しかし、地方に行けば、入居一時金も安く、月額利用料も12〜13万円程度のホームはたくさんあります。部屋の間取りも都心に比べれば広々としています。もし都心に対するこだわりが親にないのであれば、介護のため地方に移住するのも魅力的な選択肢の一つです。
ただし、一口に有料老人ホームといっても、施設長の考え方や人柄によって、施設の雰囲気は大きく違ってきます。優秀な施設長がいるホームはスタッフの入れ替わりも少なく、サービスが安定しています。これは有料老人ホーム以外の施設も同じことなのです。だからこそ、あらかじめ色々な施設を見学して情報収集をしておくことが、満足度の高い施設選びにつながるのです。
ちなみに、特養は見学を断られるケースもあるので、知り合いが面会に行くのについていき、雰囲気をチェックしておくとよいでしょう。
親の介護にかかるお金は、子供によほど金銭的な余裕がある場合を除いて、親の財布から出すべきだと私は考えています。
子供としては、少しでも親に良い介護を受けてほしいので、可能な限り支援をしたいところです。しかし、自分の子供の教育プランに狂いが生じるだけでなく、すぐそこまで迫っている自分の老後の資金プランにまで影響を及ぼします。そんなことは親も望んでいないはず。
ですから、子供としてすべきなのは、親がどれだけ老後に備えた資金を持っているかを把握したうえで、その範囲内でできるだけ親の希望に添える介護プランを一緒に考えることです。
そこでぜひ親に作ってもらうようお願いしてほしいのが、「貯金簿」です。仕事をリタイアして年金生活に入ると、貯金は毎年確実に目減りしていきます。そこで貯金簿を作成することで、今後の減少額を可視化するのです。そして貯金簿をもとに、その中から介護にどれだけのお金を当てられるかを試算します。
親とお金の話をするのは誰だって避けたいものです。でも、嫌な話を早めにしておくことで、身の丈に合った介護プランを考えることが可能になります。「親の介護について、気になっているが何もしていない」という人は、ぜひこの帰省時期に、一歩を踏み出してください。少しでも、読者のお金の不安が少なくなれば幸いです。
『THE21』2019年1月号より
取材構成 長谷川 敦
更新:11月23日 00:05