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年末年始 親と「貯金簿」をシェアして、 介護プランを立てておこう

2018年12月25日 公開
2023年03月13日 更新

畠中雅子(ファイナンシャルプランナー)

資産2,000万円以上でも介護破産!?

高齢期を迎えた親を持つビジネスパーソンは、親の介護を視野に入れる時期。親に介護の話は切り出しにくいものだが、かといって避けても通れない。そこで、「高齢期のお金を考える会」を主宰する畠中雅子氏に、親の介護とお金の問題について年末年始に話し合うべきこと、会話の切り出し方などについてうかがった。

 

資産がある家庭こそ介護破産に陥りやすい!?

 生命保険文化センターの調査によれば、介護にかかる月々の費用は平均7万8000円。リフォームや介護用ベッドの購入などの際、一時的にかかった費用は平均69 万円となっています。

 また介護期間の平均は、54・5カ月(4年7カ月)です。

 毎月7万8000円を約55カ月支払うとすれば、合計で約430万円。これに一時費用の69 万円を加えれば、およそ500万円がかかります。

 ただし、これはあくまでも平均の「目安」です。実際には介護期間が10年以上にわたるケースも珍しくありません。

 また要介護状態になったあとの生活場所として、民間の有料老人ホームを選ぶか、公的施設である特別養護老人ホームに入居するか、在宅で過ごすかなどによって、かかる費用は大きく変わります。長期化すればするほど、当然費用もかさみます。

 とはいえ、まだ元気に生活している親に対して、子供のほうから介護の話を切り出すのは、なかなか気が重いものです。そのため、多くの家庭では親が要介護状態になって初めて、介護を真剣に考え始めます。

 しかし、親が倒れてから急に施設を探しても、適切な施設が見つかる可能性は低いでしょう。私はこれまで、緊急で施設に入所させたけれど、お金が払えなくなり困っているという案件を数多く受けてきました。

 特に注意が必要なのは、老後資金として2000万〜4000万円の蓄えがある家庭です。こうした家庭の親は、「お金はそれなりにあるから、いざとなっても何とかなる」と考えがち。

 しかし、なまじお金があるぶん、要介護状態になってから、吟味もせずにコストパフォーマンスの悪い施設に入居することがしばしばあります。

 あるいは、高望みして良い施設に入居したけれど、予想以上に長生きして、資金計画が狂ってしまったというケースも少なくありません。

 いくらお金があっても、選択を間違えると資金が底を尽き、介護破産を迎えるリスクは十分にあり得るのです。親を介護施設の見学に誘ってみよう

 だから私は常々、「親が元気なうちにこそ、介護の方針を決めましょう」とアドバイスしています。いずれ考えなくてはならないのですから、年末年始に家族が集まったときなどを利用して、介護について話し合う機会を設けたほうがよいのではないでしょうか。

 そのきっかけとして、例えば「お昼でも食べにいかない? ついでに、ホームも見学してみようよ」といった気軽な感じで、親を施設見学に誘ってみてはいかがでしょうか。親によっては施設に入るのは絶対にイヤで、最後まで在宅で暮らしたいという方もいますが、そうした方の中には、先入観だけで施設にマイナスイメージを抱いていることも少なくありません。実際に施設を訪ねてみると、「意外と悪くない」と考えが変わることもあります。

 それに、施設見学は親自身が要介護状態になったときに、「どんな環境で過ごしたいか」を考える機会にもつながります。それでも、親が「私は在宅がいい」と言った場合は、できる限り親の意思を尊重しましょう。

 もし可能なら、10〜15施設ぐらい回ってみることをお勧めします。見学を続けるうちに、「有料老人ホームが一番だけど、資金を考えれば介護型ケアハウスが妥当かな」といった具合に、親の中で現実的なプランが次第に見えてくるようになります。その時点でもう一度、要介護状態になったときの生活とお金について親と話し合う機会を持つとよいでしょう。

 

施設よりも在宅のほうが安上がりとは限らない

 そもそも、介護にはどんな選択肢があるのでしょうか。

 まず、親が要介護状態になったときには、公的介護保険サービスを利用しながら、在宅で生活を続けるという選択と、施設に入居するという選択があります。よく、「施設はお金がかかる、在宅のほうが安い」というイメージを抱いている方がいますが、必ずしもそうとは限りません。

 介護保険制度では、市町村に申請をして要支援や要介護の認定を受けると、訪問介護等の様々な介護サービスが受けられるようになります。認定は、心身の状態によって「要支援1、2」と「要介護1〜5」の7段階に分かれています。介護サービスの利用限度額は、各段階に設定されており、その範囲内なら利用者は1割負担(所得が高い場合、2割または3割負担)となります。ただし、利用限度額を超えて利用する場合は、そのぶんは全額自己負担です。

 要介護の段階がまだ1や2程度であれば、介護サービスの利用限度額内で、在宅で生活していけます。しかし、要介護4や5になると、利用限度額を超えてでも介護サービスを利用しなくてはいけない場面が増えていきます。

 こうなると、在宅よりも施設に入所するほうが安く抑えられることもあるのです。

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著者紹介

畠中雅子(はたなか・まさこ)

ファイナンシャルプランナー

高齢者施設への住み替え資金アドバイスを行なう「高齢期のお金を考える会」を主宰。自身でも250カ月を超える高齢者施設を見学している。著書に『貯金1,000万円以下でも老後は暮らせる』(すばる舎)、『これで安心!入院・介護のお金』(共著・技術評論社)などがある。

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