2017年12月27日 公開
2023年03月23日 更新
これまで数多くの資産家の相続を見てきた(株)アレース・ファミリーオフィス代表の江幡吉昭氏によると、何ら事前に対策をとっていなかったため、相続税の負担や相続人間の争いであっという間に資産が目減りしてしまうケースが少なくないという。
折しも2015年から相続税の基礎控除が引き下げられたほか、2018年から広大地評価が変わる、2022年から生産緑地の期限が順次切れるなど、地主や都市農家など広い土地を所有する一族には厳しい時代が訪れようとしている。
広い土地を親から引き継ぐ見込みの若い後継者世代の人にとって、「得する相続」のポイントを伺った。
多くの不動産を所有し、地元の名士として周囲の尊敬を集めてきたのが地主や都市農家のみなさんです。
例えば都市農家のみなさんは多くの場合、代々農業を営み、「家」を守り続けてきた誇りがあります。土地への思い入れが強く、なかなか思い切った対策をとることができません。
しかし、いくら土地への思い入れが強くても、多額の相続税を支払わなければならないとなれば、背に腹は代えられません。
モデルケースで試算してみましょう。所有する不動産などの相続税評価額が合計10億円として、3世代にわたって相続が続くとします。
各世代とも相続人は配偶者と子、あるいは子一人とし、「配偶者の税額軽減」のみ考慮して単純に計算すると、3代相続が続いた後には資産が1億7000万円程度にまで減ってしまうのです。
この間、経済情勢が変化したり、相続人の間でもめ事があったりすれば、1億円さえ残っていないかもしれません。
恵まれた地主や都市農家の一族であっても、3代相続が続くとタダの家になってしまうことは十分ありえます。
地主や都市農家のみなさんはこれまで、先祖伝来の土地を堅実に守り管理していれば、いつの間にか新しい道路や鉄道ができたり、周辺で宅地開発が進んだりすることで、自然に資産を増やすことができました。
しかし、社会や経済の状況は大きく変わりつつあります。地方だけでなく都市近郊でもアパートなどの空室が増え、賃料は下がっています。そうした変化にうすうす気づいていながら、見て見ぬふりをしている人が少なくないのではないでしょうか。
我慢していれば状況が良くなる、というわけではありません。むしろ、早く手を打たないとどんどん悪くなっていきます。たとえば、これから30年で東京都民の3人に1人は65歳以上になります。50年で日本の人口は4000万人ほど減ります。
地球上で長く生き残ってきたのは、力の強い生物ではなく、環境の変化に柔軟に対応した生物です。地主や都市農家のみなさんも、同じです。
更新:11月21日 00:05