2018年11月09日 公開
2018年11月09日 更新
苦境を切り抜け、会社の再建に成功した湯澤氏だが、今もメンタルが強くなったとは感じていないという。
「社員が辞めたいと言ったり、お客様からクレームが来たりするたびに、狼狽えています(笑)。悪いことがあったとき、それをストレスに感じたり、プレッシャーに感じたりする大きさは、以前とまったく変わりません。
ただ、『これまでも悪い事態に対処できてきた経験があるのだから、今回も対処できるだろう』と思えて、メンタルを正常な状態に早く戻せるようになったとは感じます。
私は、『チャレンジノート』というノートをつけていて、苦しいことや悩みがあったら、そこに思うままに書いています。そして、最後は『必ず乗り越えられる』で締めくくるようにしています。書くことで問題を客観視できますし、自分が何度も苦しい状況を乗り越えてきたことを振り返る役にも立っています。
見返すと、自分がどういう問題に対してどう反応するのかという特性も把握することもできます。今では、苦しいことがあると、『やった! チャレンジノートに書けるぞ』と思えるくらいになりました(笑)」
ストレスやプレッシャーを大きく感じてしまう性格は、仕事をするうえで不利ではないかとも思えるが、そうではないと湯澤氏は話す。
「私も、サラリーマンをしているときは、小心者であることを弱みだと思っていました。小心者であることは学生時代から自覚していましたが、それを他人に見せたくないので、肩で風を切るように振る舞っていました。
それができていたのは、幸いにも結果を出せていたからだと思います。
サラリーマンをしていると、『あの人はメンタルが強いから、仕事がうまくいっている』と思う同僚がいるかもしれませんが、実際には逆で、仕事がうまくいっているから、メンタルが強く見えるような振る舞いができている場合が多いと思います。
もし本当に強靭なメンタルを持っていて、何が起こっても平気なのだとしたら、仕事で結果を出すために何をすべきか考えないでしょう。ストレスやプレッシャーを強く感じるからこそ、緻密に考えるのです」
小心者であることが結果につながるのは、経営者も同じだという。
「中には、メンタルが強くて、ポジティブシンキングで成功する経営者もいます。ただ、それはほんのひと握りだけ。何が起こっても動じることがなければ、会社が傾くのが普通です。
例えば、社員が辞めたいと言ったときに、動揺することもなく『好きなようにすればいい』と言っていれば、その会社はいずれ潰れるのではないでしょうか。
私の場合は、父の会社を引き継いだことで追い詰められ、自分が小心者であることを隠している余裕などなくなって、社員にも素の自分を曝け出さざるを得なくなりました」
ただし、小心者であることを強みに変えるには、仕事の仕方に工夫が必要だ。
「例えば、不採算店舗を閉めるのは、大きなストレスです。大家さんに怒られるのかと思うと気が重くて、電話をかけることすらできません。
そこで、撤退に必要なプロセスを細分化しました。
まずは、大家さんの電話番号を調べるだけ。調べて、そのメモをデスクに置いておけば、それが気になって、電話をかけるというステップに踏み出しやすくなります。
細分化したタスクを一つひとつ達成することは、成功体験を重ねることにもなります。すると、『自分はできる』という自己効力感が強くなります」
更新:11月25日 00:05