2012年11月05日 公開
2022年12月15日 更新
大きな商談や決断を前に、プレッシャーに負けてしまったことのある読者もいるのではないだろうか。ここでは、プロビジネスマンが参考とすべき、第一線で活躍する指導者たちのメンタル管理方法を紹介する。
※本稿は、『THE21』2012年11月号総力特集「プロビジネスマンの心を強くする習慣」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
・辻野晃一郎(つじのこういちろう):アレックス〔株〕代表取締役社長兼CEO
・張本邦夫(はりもとくにお):TOTO〔株〕代表取締役社長執行役員
・中山譲治(なかやまじょうじ):第一三共〔株〕代表取締役社長兼CEO
・小路明善(こうじあきよし):アサヒビール〔株〕代表取締役社長
・粟田貴也(あわたたかや):〔株〕トリドール代表取締役社
(本誌での記事掲載順、写真左から)
ここでは、5人のお話を総合して浮かび上がった、プロビジネスマンのメンタル強化術を4項目にまとめてみた。
今回ご登場いただいた方々はみな、「自分のメンタルが元から特別強いとは思わない」という。また、そもそも「心が弱いことを気にする必要はない」という意見があったことには驚かされた。
TOTO社長の張本邦雄氏は、「メンタルの強い弱いはたしかにあるが、それも個性」と述べる。弱気な人がその特性を活かす場面もあるはずなので、自分の強みと思って伸ばすべきであり、また強さが必要な局面では「自分は強い」と思い込めばよいという。
また、トリドール社長の粟田貴也氏も、「弱音を吐いてもいい」と述べる。そのためには「自分はまだまだ、大したことがない」と思うことが重要だそうだ。こうすれば弱い自分を許せる。また、逆に「もっと上をめざそう」というモチベーションにもつなげられるという。
粟田氏が経営するトリドールは、焼鳥店がメインだったものの、鳥インフルエンザという予期せぬ事態をきっかけに、うどん店も始めたという。それだけ聞くとさすが成功者は先見の明がある、と思ってしまいがちだが、実際には数多くの失敗をしたという。
「最初から絶対の自信をもって挑戦したことなど何もない」というほどに、つねに新しい挑戦をしてきた。しかし、結果に一喜一憂せずにそうしてきたことがいまの成功をつくったのである。
アサヒビール社長・小路明善氏も、「やれることをすべてやったら、結果は気にしない」という。もし結果が出なければ、そのときプロセスを見直して反省すればよい。自ら「51勝49敗」と話す小路氏の言葉は、失敗を悔やみすぎず、次に活かすことの重要性を教えてくれる。
アレックスCEO・辻野晃一郎氏は、ストレスにはよいものと悪いものの2種類があるという。前者は大きな挑戦へのプレッシャーなど。後者は人間関係の軋轢などだ。
前者のストレスは乗り越えれば自身の成長につながるので、立ち向かうことが重要だが、後者は自分ではどうにもならないうえに、メンタルに悪影響をおよぼすので、そこから逃げてもいいという。
辻野氏も、後者のストレスに悩まされ、組織を飛び出して新しいステージに移った経験をもつ。まずは自分のストレスの原因がどこにあるのか見極める必要がある。
張本氏は、ストレスやプレッシャーを感じても冷静に、問題解決のためのデータ分析をまず行なうことが重要だという。「自分で納得感をもって取り組むことがモチベーションになる」ということだ。
第一三共社長の中山讓治氏は、「最近は"想定外"だと驚くことがあまりない」と話す。元来、何か行動を起こす際には結果がどう出るか、シミュレーションをするという。そのなかで、ある程度は結果が予測できるようになってきたそうだ。
小路氏も、「できるかぎりの準備は欠かさない」と語る。失敗しても引きずらないのは前述のとおりだが、実際に挑戦するまでには入念な準備を行なう。「自分にやれることは全部やり尽くした」という状態で本番に臨むことで、プレッシャーに打ち勝つことができる。
まずは弱いメンタルをどう補強するか、周到な準備をもって難局に備える。そして、場数を踏んでいくうちに、ストレス耐性ができていく。ビジネスマンにとってもっとも現実的といえる方法ではないだろうか。
更新:11月25日 00:05