2018年10月07日 公開
2022年10月25日 更新
――話は遡りますが、そもそも台湾のストーンペーパーに出会ったのは、どのような経緯だったのでしょうか?
山﨑 新しいビジネスの種を探していたときに、知り合いの経営者に「こんなものがあるのを知っているか?」と1枚の名刺を渡されたんです。「これは石灰石でできていて、台湾で作られているんだ」と聞いて、輸入元にしてほしいと交渉しに行きました。
――最初の起業は中古車販売会社でしたが、業種に囚われず、色々なビジネスをしようと思っていた?
山﨑 中学校を卒業してすぐに大工の見習いになって働き始めて、学歴がありませんから、大きな会社に入って活躍することは難しいだろうと思っていました。けれども、「自分で大きな会社を作る可能性は残っているのだから、それにチャレンジしたい」と思い、20歳のときに起業したんです。
中古車販売のあとは、先輩たちに誘われて建築関係の仕事をしたり、その延長線上で住宅設備の販売をしたりと、色々な事業をしました。
そうして起業してから10年くらい経ったときに、初めてヨーロッパを旅行する機会がありました。そこで、大きな衝撃を受けたのです。何百年も前に建てられた建物を見て、本当に感動しました。何百年の前のものが今の人に感動を与えるのは、本当にすごいことだな、と思いました。
起業してからの10年、いろんなことがありましたが、あっという間だったという感覚もありました。「これをあと3~4回繰り返せば、現役を離れて、『お爺ちゃん』と呼ばれるようになるんだな。その3~4回の間に、何百年も残る建物は建てられないけれども、何百年も挑戦し続けていく会社のベースを作ろう。それも、グローバルに挑戦し続ける、『兆』がつく規模の会社のベースを作ろう」と思いました。そして、そのための事業を探すようになったのです。
その3年後に、ストーンペーパーと出会いました。ただ、出会ったときは、それが探していた事業だとは思いませんでした。まだニッチな商品でしたから。輸入商社になってから、対外的な評価を得るなどする中で、グローバルで「兆」がつく規模になる可能性に気がついたのです。木材パルプ以外から作る紙の代替品は他にも色々なものが出ていたのですが、資源の埋蔵量などの持続可能性や価格競争力を考えると、石灰石を主原料にしたストーンペーパーに大きな可能性があると思いました。
――資金が尽きる事態になっても、LIMEXに入れ込み続けられたのは、なぜだったのでしょうか?
山﨑 これだけ大きな可能性があるものに出会えて、これだけの方々が支援してくれている以上、絶対にやり遂げなきゃいけないと思いましたね。
――それだけの覚悟や胆力は、どこから来るのでしょう?
山﨑 よく聞かれるんですけど、支援してくれている方々への感謝だと思います。苦しいときも、当社のために走りまわってくれている方たちの顔が頭に浮かんで、「ここで諦めたら、彼らに背を向けることになる」と思いました。「自分が儲けたい」という気持ちを判断軸にしていたら、絶対に耐えられなかったでしょう。
僕は大阪の岸和田の出身で、だんじりを引いたりしていましたから、仲間意識が強いのかもしれません。しかし、それよりも、何度もどん底を経験したことで、そのときに手を差し伸べてくれる方のありがたさが骨身に沁みているんです。
1回しかない人生で、これだけ大きな期待と責任を背負えるのは幸せだと思います。ですから、誰が見ても「よくやった」と言ってもらえるところまで、やれる限りのことをやろうと思っています。
――経営者として、モデルにしている方はいますか?
山﨑 孫(正義)さんに対する憧れはすごくありました。20歳で起業した当時から、大きなことを言って実現していく姿が格好良かったですね。
孫さんを目指すと言うのはおこがましいですが、僕が作ったベースをもとに会社が成長し続けて、仲間やパートナーがもっともっと集まり、ソフトバンクに追いつけ追い越せと言えるようになってほしいと願っています。
――今も同じ志を持った社員が集まってきている?
山﨑 発展途上国の人たちの暮らしに触れて、彼らに貢献する技術開発をしたいと、大企業での安定したキャリアを捨てて飛び込んできた社員もいます。そういう話を社内で互いにしているので、社員の意識が自然と高まっています。最強で最高のチームができつつあると思います。
オフィスに掲げられた企業理念。ただ、「あえて理念を刷り込まなくても、社員同士が自然と意識を高めあっている」と山﨑氏は話す
人数としては、昨年は10数人の純増でしたが、これから一気に増やしていくつもりです。
――採用で重視していることは、なんでしょうか?
山﨑 何があってもやりきる胆力や、一緒に感動できるかどうか、です。自分の主張もしながら、パートナーのことも理解して、一緒になって困難を乗り越え、その感動を分かち合える。そういう人に、入社していただきたいと思っています。
《写真撮影:長谷川博一》
更新:11月22日 00:05