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TBM「世界的なプラスチック問題の高まりは、LIMEXが貢献できる大きなチャンス」

2018年10月07日 公開
2022年10月25日 更新

【経営トップに聞く】山﨑敦義(TBM CEO)

 

山﨑敦義

 

立ちはだかった資金調達の壁をいかに越えたか

 ――試作品ができて、資金調達に動き出したのは、いつだったのでしょうか?

山﨑 2011年です。しかし、リーマンショック後で、東日本大震災も起こりましたから、日本国内での資金調達は非常に難しかった。そこで、震災の影響がない中東やシンガポールに出資を求めに行くことにしました。水資源が乏しい国々なので、LIMEXに興味を持って先行投資をしてくれるのではないかと期待したのです。

 ところが、皆、「これはすごい」と言ってくれるのですが、「工場ができて、製品ができたら、ぜひ一緒にやろう」という答えばかりで、資金は集められないまま帰国しました。

 期待が高いことだけはますます確信したものの、「いよいよ、もうダメかな」というところまで資金がなくなっていきました。

 取引先に分割払いをお願いせざるを得ないような状況で、夢を見続けることが許されるのかどうか、自問自答したこともありました。それでも、自分の身体が動く限り諦めないと決めて、色々な方のところへ支援を仰いでまわりました。当時やっていたことは、傍から見れば、悪あがきだったでしょうね(笑)。

 ――そんな頃に、野田一夫さんに出会ったと。

山﨑 ベンチャーのレジェンドである一夫先生との出会いは、ものすごく大きかった。非常に意義のある事業だと言っていただいたうえに、LIMEXという名前もつけていただき、とても嬉しかったです。人を紹介していただいたり、一緒に会いに行っていただいたりもしました。

 経済産業省に補助金の申請をしたのも、一夫先生のアドバイスがあったからです。ダメモトで申請したのですが、2013年1月25日に最終プレゼンに呼んでいただき、2月6日に採択が決まって、約9億円の補助金を受けることができました。

 そこから、「日本の国がバックアップしている技術なんだったら」と、投資していただける方が増えて、宮城県白石市に工場を完成させることができました。

 ――工場の建設地を白石にしたのには、震災が関係しているそうですね。

山﨑 震災が起こったとき、食料を持って白石に行ったのですが、周りの経営者が大きな支援をしている中で、僕は会社の資金調達にも苦労している状態でしたから、「なんて力がないんだ」と歯がゆく感じました。それで、「この場所に貢献できる経営者になりたい」と思ったのです。

 ――工場ができてからは、経営は安定しましたか?

山﨑 20億円をかけた工場ができてからも、製品が作れるようになるまでに1年かかりました。R&Dではできたことでも、実機ではなかなか難しかったのです。

 ただ、工場ができたことで支援していただける方がさらに増えましたから、当社にとって非常に大きな転機になったと思います。

 ――その頃に作っていたのは、紙の代替品だけ?

山﨑 フィルムの代替品も作っていました。

 プラスチックの代替品は、工場ができた当初、どんどん出てくる売り物にならない「ゴミ」をなんとか有効利用できないかと考える中でできた製品です。まさに、ピンチはチャンスですね。

 ――LIMEXは世界のエコロジーに貢献できる製品だということですが、海外展開の現状はいかがでしょうか?

山﨑 お問い合わせをいただくうち、3~4割は海外です。

 輸出も少しずつスタートさせていますし、海外の企業が投資した現地工場でのLIMEXの生産も検討しています。例えば、昨年3月にサウジアラビアのサルマン国王が来日された際には、当社と日揮〔株〕、サウジアラビアの国家産業クラスター開発計画庁の3者が、サウジアラビアでのLIMEXの生産について検討するための基本合意を締結しました。水資源が少ないサウジアラビアでも、自国の資源で生産できるということで、LIMEXに期待していただいています。

 ――スターバックスやマクドナルドがプラスチック製ストローの廃止を発表するなど、世界的なプラスチック廃止の流れがあります。それも追い風になっていますか?

山﨑 先進国でも発展途上国でも、プラスチック禁止の法令が次々と出されています。例えば、ケニアでは昨年8月にポリ袋が禁止され、違反すると最大で約400万円の罰金が課せられることになりました。プラスチックの問題が世界中でフォーカスされてきていることで、その代替品の需要が急速に高まっていますから、当社が貢献できる大きなチャンスだと思います。

 その需要に応えられるだけの人員とネットワークを築くために、積極的な投資をして、事業拡大のスピードを上げていっています。8月に伊藤忠商事〔株〕と資本業務提携を結ばせていただいたのも、事業拡大のスピードを上げるためです。

 2つ目の自社工場も、宮城県多賀城市に建設を予定しています。白石工場の5倍の規模で、2020年に竣工、稼働予定です。

 

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著者紹介

山﨑敦義(やまさき・のぶよし)

〔株〕TBM代表取締役CEO

1973年、大阪府生まれ。20歳で中古車販売業を起業後、複数の事業立ち上げる。30代になり、グローバルで勝負ができて100年後も継承される、人類の幸せに貢献できる1兆円事業を興したいと奮起。時代の架け橋となる〔株〕TBMを立ち上げる。Japan Venture Awards 2016「東日本大震災復興賞」受賞。Plug and Play 2016「世の中に最も社会的影響を与える企業―ソーシャルインパクトアワード」受賞。17年、スタンフォード大学にて日米イノベーションアワード受賞。日経スペシャル『カンブリア宮殿』10周年500回記念番組に登場。

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