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「現場しがみつき上司」が部下をつぶす

2018年09月21日 公開
2023年03月14日 更新

糠谷和弘(スターコンサルティンググループ代表取締役)

“現場の親分”ではなく“ミニ経営者”

まず、あなたに必要なのは「施設長は“現場の”代表者だ」という、誤った「施設長像」を捨てることです。

「現場の親分」だと思うから、現場に近づきたくなるのです。そんな考えは、一刻も早く捨ててしまったほうがよい。むしろ、邪魔なだけだと思います。

施設のトップであるあなたは、1つの施設の「経営」を任されています。その意味では「社長、理事長と同じ」と言ってもよいでしょう。

もちろん、経営トップほどの権限や責任はないにしても、スタッフに適正な給与を支払い続けるために、経営を安定させる任務があります。

スタッフが「ここで働き続けたい」と思えるよう、未来を語る役割があります。

どのスタッフも均質のサービスが提供できるように育成する責任があります。

ですから、仕事の時間の大半は「現場の親分」ではなく、「ミニ経営者」として使わなくてはならないのです。

これからは、安易に現場に身を投じることのないようにしましょう。

最初は慣れない経営的な役割に、大きな不安を感じるかもしれません。しかし、そこがスタートです。

施設長にしかできないことを全力でやる。それが大事なのです。

もしかしたら、「私たちはこんなに忙しいのに、施設長はちっとも現場を手伝ってくれない」と批判するスタッフもいるかもしれません。その声に負けてはダメです。

もちろん、私は「手伝うな」と言いたいわけではありません。優先順位を間違ってほしくないのです。

 

「背中で教える」は非効率な指導法

「施設長は、現場に出てはダメ」と言うと、「やはり現場で、自分の頑張っている姿を見せないと」「指示するからには“率先垂範”しないと」などと反論する人がいます。

これも“間違った施設長像”の1つです。

率先垂範は悪いことではありません。特に、挨拶や言葉遣い、立ち居振る舞いなどは、施設長がルーズだと現場もゆるんできます。ぜひ、自ら先頭に立ってやってほしいと思います。

しかし、介護業務や現場作業を、あなたが前面に出てやる必要があるでしょうか。

あなたの背中を見て、現場スタッフがスクスクと育ってくれるならよいですが、今はそんな時代ではありません。

それどころか私は、この“背中で教える施設長”が、介護業界の発展を邪魔しているのではないかとさえ思っています。

施設長に限った話ではありませんが、“背中教育”は言い換えれば、手取り足取り教えない指導法でもあります。“職人教育”とも言えるかもしれません。多くは、テキストや教本もなく、口頭による説明で、その場の状況に合わせて行われます。

「臨機応変」と言えば聞こえはいいですが、要は“体系立っていない”ことを意味しており、指導者の勘と経験に頼った指導法とも言えます。とても非効率な方法です。

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