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毅然として戦う!アフリカにブシドーを見た(タンザニア)

2018年08月04日 公開
2018年08月07日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(36)石澤義裕(デザイナー)

朝から晩までキリマンジャロ


最高のフレンドリー接客術を持つ、中華料理屋の店員。麻婆豆腐は美味しくないのに、一週間に3回も通ってしまいました。

中古の軽自動車になけなしの家財道具を詰め込んで、アフリカはタンザニアまで流れてきました。

朝は、キリマンジャロ・コーヒーで目覚め、昼はキリマンジャロの白い頂を眺め、夜はキリマンジャロ・ビールで乾杯。

日差しは強いものの、標高は1000メートル以上。日陰は、内股に力がこもるほどに寒いです。

 

タンザニアに現われた上杉鷹山?

「This is Africa」と言えばなんでも許されるアフリカにおいて、タンザニアのマグフリ大統領は、江戸時代の政治家をすべて一緒くたにしたような、改革派の暴れん坊将軍です。

とかく総力を結集して私利私欲、終身雇用の獲得に勤しむのがアフリカ大統領のステレオタイプですが、本気で財政再建に取り組みます。

まず、自ら給料を3分の1に減給。およそ45万円。ちなみにお隣ケニアの大統領の月給は、160万円。

このアフリカ版上杉鷹山大統領は、ただ経費を削るだけではありません。

独立記念日の式典を中止にし、議会の夕食会の予算を90%以上削減。浮かせたお金で病院のベッドを買ったというから、泣かせるじゃないですか。

だれか、日本の大統領に聞かせてやってください。

 

外人には痛快。でも国民の人気は残念なことに……


メカニックは、ひと言も余計なことを言いません。挨拶もないけど。しかし腕は一流。手際が良い。

また日本の天保の改革に遅れること180年。

タンザニアの水野忠邦大統領が引き起こす、綱紀粛正、豪奢禁止の嵐は痛快です。

大臣の数を3割以上も削減。これはスゴい。できるんですね、こんなこと。

経歴詐称の公務員を1万人もクビにし、給料だけ受け取る幽霊公務員の解雇も1万人というから拍手喝采です。

大統領自ら、飛行機のファーストクラスを禁止。

それ以前に、無駄な外遊そのものを禁じたため、空港で足止めを食らう公務員が続出。いやー、なんだかとてもいい気味。

会議に遅刻した公務員を6時間も刑務所だか留置所だかに収監したエピソードも、水戸黄門を見ているような爽快さです。

他人事とはいえ、実に気持ちのいい政策の数々。溜飲がだだ下がり、ました。

 

さらに大統領は松平定信のごとく、汚職撲滅に励みます。

その効果たるや絶大で、警察官の賄賂請求がゼロになったわけではありませんが、しつこくありません。

筆者は冤罪を含めて4回もの交通違反で捕まりましたが、正規の違反キップすら切らないほど、お金に淡白です。

ただ残念なことに、経費削減、公務員の削減、汚職撲滅と大ナタを振るえば振るうほど、支持率は急降下。

「あれもこれも禁止されてさ……」

「ちょっと違反したら、すぐ罰金」

「ちょっと商売したら、すぐ税金」

会う人会う人、袖の下がスースーするよと愚痴ります。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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