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世界第4位のポテンシャル?ゆるふわ商人たち(モザンビーク)

2018年06月05日 公開
2018年06月05日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(34)石澤義裕(デザイナー)

この国の人たちは、騙されても憎めません


意味もなく照れ笑いする青年

軽自動車を寝ぐらにする、大陸放浪夫婦です。

稚内港を出ておよそ3年、アフリカ大陸の19カ国目、モザンビークに入りました。

独立戦争に11年、内戦に15年と戦さ続きだった同国。平和になったと思ったら、国民にはまったく覚えのない政府筋の隠れ借金が発覚。多額の使途不明金がジャングルに消え、国の格付けは大幅に下落。通貨も半分に。欧州からの経済支援を打ち切られ、人間開発指数は187カ国中184位です。

ナニを持って人様を未開発呼ばわりするかは知りませんが、言い換えれば、秘めたポテンシャルは世界で4番目です。

しかも、ステレオタイプのアフリカ人のように、意味もなく大声を張り上げず、威張りません。

3歩下がってへらへら笑う謙虚な佇まいに、モザンビークの潜在能力が隠れています。

 

「モザンビークは最悪」は本当か?

「モザンビークは気をつけてね」

「警察は最悪だから。検問ではお金をたかられるから」

南アフリカで、幾度ともなく忠告されました。

確かによく検問で呼び止められますが、南アフリカの警察官のように、寄ってたかって冤罪をなすりつけることはありません。

小さな声で、「金」とひと言つぶやくだけ。

たとえ断っても、ガーナ人のように刑務所行きだっ!と脅すことはなく、ナイジェリア人のように怒鳴ったりもしません。

あ、そうなの、ふーんって感じのすっとぼけ感。あるいは軽い照れ笑い、へへへ……。

とかく声の大きさと筋肉自慢で世渡りするアフリカ男性陣において、モザンビークの警察官が見せる「おとぼけ感」と「照れ笑い」は新鮮です。

憎めません。

 

誠実なシール売り。でもインチキ


沿道のカシューナッツ売り。デコレーションするとは、アフリカで一番商売熱心です

「この車、君のなの?」

「小さくてCoolだね」

「実はですね、モンザビークでは車に青いシールを貼らないと違反なんです」

ここにその旨書いてあります、とカバンから英語の書類を取り出す青年。

「1枚200円。前と後ろで400円」

乗車券を売る車掌さんのように、出しゃばらない控えめな態度。

「いつでもここにいますから、声をかけてくださいね」

ごり押しせず、すーと身を引く営業。好感度大です。

ありがとう、後で買いに来ます。

いい人に出会ったなと喜びつつも念のため、国境事務所でシールについて尋ねたら、嘘でした。

インチキシール。

バッタもんシールを売りつける連中は西アフリカにもいましたが、普通は考える暇を与えないマシンガントークの炸裂。財布を開くまでまくし立てます。

そこへゆくと先程の青年は、イソップ寓話の「北風と太陽」。役者が1枚上です。

やや離れた木陰で静かに微笑んでいる、シール売り。

とてもとても、嘘つき野郎!と責められる雰囲気ではなく、とりあえず親指を立てときました。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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