2017年1月から加入できるようになった「個人型確定拠出年金」通称iDeCo。今までの年金に上乗せする年金を自分で作り出すことができるシステムだ。賢く利用して老後資金を確保しよう。
「iDeCo(イデコ)」は、20歳以上60歳未満の人が加入できる個人型確定拠出年金制度です。
毎月一定の掛け金を積み立て、その掛金を自分で選んだ金融商品で運用していく仕組みです。定期預金や保険など元本確保型の商品で運用することもできますが、投資信託を選べば効率的に資産を増やすことが期待できます。
iDeCoの最大のメリットは、税制面の優遇です。この点に関してだけでも非常に画期的な制度であり、利用しない手はないと考えます。
まず、毎月の掛け金の全額が所得控除の対象になります。たとえば、掛金が毎月2万円で、所得税率が20%の場合、年に4万8000円の税額軽減になります。20年間では、96万円の節税になる計算です。
また、通常なら金融商品の運用によって得た収益には源泉分離課税20.315%が課せられますが、iDeCoなら運用益も非課税になります。
さらに、年金の給付時にも税金の優遇が受けられます。iDeCoは受け取り方法を選択できますが、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」の対象となります。
ただし、注意点もあります。それは、60歳になるまで積立金を引き出せないことです。とはいえ、iDeCoはあくまでも「老後に備えるため」という目的で使うものだということを理解して始めれば、この点は大きなデメリットにはなりません。
それにiDeCoの掛金は最低月額5,000円から設定できて、原則年1回まで掛金の金額も変更できるので、その時々の状況に応じて無理なく続けられます。どうしても掛金を捻出できない場合、一時的に掛金の拠出をストップすることも可能です。60歳になるまで引き出せない点を心配するより、毎年の所得税が軽減されることを考えれば、そのメリットを享受しないほうがもったいないはずです。
iDeCoを始めるにあたっては、自分で運用する金融機関を選びます。その際、できるだけ手数料などの運用コストが低い金融機関を選ぶことが大事です。
得られた利益に対して非課税なのが魅力のNISA制度。つみたてNISAは、従来の一般NISAと比べて年間の投資上限額は少ないものの非課税期間が長く、長期・積立・分散投資に向いている制度だ。
「つみたてNISA」は、2018年1月からスタートした新しい制度です。
もともとNISA(少額投資非課税制度)は、2014年から始まった制度で、投資信託や株式の投資で得られる分配金や譲渡益が非課税になるのがメリットです。
ただし、従来のNISA口座を開設できるのは2023年まで、もうすぐ使えなくなります。また、非課税になる期間は原則として最長5年間で、初心者が長期投資するには向かないのもデメリットでした。
そこで、初心者がより使いやすい制度を目指して始まったのが、つみたてNISAです。その名の通り、少額から積立投資ができる制度で、年間の投資上限額は40万円。最大でも毎月3万3,333円までの積立なので、無理のない範囲でコツコツ投資できます。また、非課税期間が最長20年なので、長期投資にも向いています。
iDeCoは老後資金を形成するための制度ですが、つみたてNISAはいつでも資産を引き出せるので、目的や運用期間を柔軟に設定できます。例えば子供の教育資金や住宅資金など、現役のうちにお金が必要になる人は、つみたてNISAを使って投資信託で運用するとよいでしょう。5年後や10年後に引き出したとしても、預貯金や保険より高い利回りが期待でき、しかも運用益は非課税なので増えた分はそのまま手に入ります。
つみたてNISAは、投資対象の商品が絞り込まれていて、初心者が選びやすいのもメリットです。「販売手数料ゼロ」「信託報酬は一定以下」などいくつかの条件をクリアし、金融庁が「長期の積立・分散投資」に向いていると判断した投資信託とETF(上場投資信託)だけを対象としています。2018年7月現在、対象商品は152本で、うち132本が初心者向けのインデックス型です。
つみたてNISAを始める際も、金融機関を選んで専用口座を開く必要があります。ただし、iDeCoのように口座管理手数料や口座開設の手数料はかかりません。金融機関によって扱っている対象商品の本数に差があるので、自分が投資したい商品の取り扱いがあるかを確認してから口座を開いてください。
<『THE21』2018年9月号より>
更新:11月23日 00:05