2018年05月30日 公開
2018年06月04日 更新
正確性と厳密さが求められるビジネスシーンにおいては数字が大変重要であるとはいえ、数字は使いさえすればいいというものではありません。ただ並べられただけの数字は単なる値に過ぎないからです。
私は職業柄、いろいろな生徒からテストの答案を見せてもらうことがありますが、たとえばそれが62点だった場合、「62」という数字だけでは何も感じられませんし、何も語れません。平均が50点である場合と平均が70点である場合とでは、62点の意味は大きく変わってきます。ですから私は必ず平均点が何点だったかを尋ねます。
また最近の学校は平均点だけでなく標準偏差(平均からのばらつきを示す統計量。標準偏差が大きいとばらつきも大きい)や、クラスや学年全体の得点分布がわかるヒストグラム(棒グラフ)等を資料として配ってくれるところも少なくないので、そういったデータがわかる場合は、それらの数字とも組み合わせて考えます。そうやってはじめて62点という点数が持っている本当の意味が見えてきます。
もちろん、過去の点数を知っている場合は、そこからどのように変化したのかもじっくり検討します。仮に前回も今回も平均を下回ってしまったとしましょう。でも、前回より平均に近くなっていたり、あるいは平均からの差は同じでも、標準偏差が前回よりも今回の方が大きかったりする場合には、成長が認められます(たとえば標準偏差〈ばらつき〉が10点のテストで平均マイナス15点の場合は、落ちこぼれだと言わざるを得ませんが、標準偏差20点のテストにおける平均マイナス15点は落ちこぼれというわけではありません)から、その頑張りは褒めてあげるべきです。ある生徒の前回と今回の成績が、
前回:60点(平均70点・標準偏差10点)
今回:62点(平均70点・標準偏差15点)
だった場合、その生徒が「今回も平均に届きませんでした」と悲嘆にくれていたとしても、これらの数字を使って、「でも、前回より標準偏差が大きくなっている中、平均からの差も縮まっているわけだから、実質的には上向いているよ。この調子で頑張ろう!」という希望のストーリーを語ることができます。
更新:11月22日 00:05