2018年05月28日 公開
2023年03月14日 更新
先日、友人とこんな会話がありました。
「永野、ちょっと聞きたいんだけれど、家電量販店ってさ、現金割引の店とポイント還元の店があるじゃん? あれってどちらの方が得なの?」
「同じ率なら現金割引の方が得だよ」
「そうなの? なんで?」
「たとえば定価1万円の商品を買いたい場合、Aという店では20%割引で、Bという店では20%ポイント還元だとしよう。A店では1万円の20%割引だから、2000円安く買えるよね?」
「そうだね」
「一方のB店では1万円を払って、20%のポイント還元だから、2000円分のポイントが付くね」
「うん。でも、だったら、得をするのはどちらも2000円で同じじゃない?」
「いや、そう思ってしまいがちだけれど、割引率を考えたら実は同じじゃないんだ」
「どういうこと?」
「B店では、1万円の商品と2000円分のポイントを手に入れたわけだから、1万2000円分の『価値』を1万円で買ったことになるでしょう? だとすると、1万2000円に対して、2000円の割引をしてくれることになるから、B店の割引率は……17%ぐらいにしかならないんだ」
「えっ? それはどういう計算?」
「2000円÷1万2000円だよ」
「計算早いね」
「約分すると、1/6だからね」
「ふ〜ん……A店は20%割引だから、A店の方が得ってことか!」
言わずもがなですが、数字は非常に強い説得力を持っています。だからこそ私の友人も20%現金割引と20%ポイント還元の違いが気になったのでしょう。
ではなぜ数字には強いメッセージ力があるのでしょうか? それは、数字を使えば厳密に比べることができるからです。自宅の床面積、道路を走る乗用車の速さ、体重等々、雰囲気や印象ではほとんど違いがわからない場合でも、数字はその僅かな違いを教えてくれます。
ただし、数字を正しく比べるためには、割合や比、分数についての理解が必要不可欠です。
新商品の名前を会議によって決めなければいけない場面を想像してください。会議には6人の社員が出席しています。名前は公募によって集まった10個の候補の中から選ぶとしましょう。
こんなとき単なる多数決を取るだけでは6人がそれぞれ、別々の候補に投票する可能性があり、そうなるとひとつに決めることができません。またそこまでバラバラにはならなくても、3票ずつ2つに分かれてしまうこともあるでしょう。
そこでお勧めなのは、良いと思う順に1〜3位を決めてもらい、1位には3点、2位には2点、3位には1点のように点数を付与して集計する方法です(このような意見の集約方法をボルダルールといいます)。こうすれば、票が割れて同点になるケースはほとんどありませんし、多くの人が3位以内にランキングした万人向けの候補に決まる可能性が高くなります。
「数字を作る」とは要するにこういうことです。他にも、アルバイトを雇うとき、経験者が1人で行うには100日かかる仕事があるならば、経験者には1、未経験者には(たとえば)0・8を付与して数値化することで、のべ60人の経験者と、のべ50人の未経験者が必要だなどと計算することもできます。
つまり、「数字を作ることができる」というのは、気持ちの強さとか仕事の熟練度などの質的パラメータも数値化して量的パラメータにすることができる上に、対象がもともと持っている数字を漏らさず見つけられる能力です。
このようにすれば、世の中のありとあらゆることは数値化できると言っても過言ではありません(そうすることの是非はまた別の問題です)。
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更新:11月22日 00:05