THE21 » キャリア » AIで仕事がなくなる…!? 本当に来るのは「すき間労働」社会!

AIで仕事がなくなる…!? 本当に来るのは「すき間労働」社会!

2018年05月25日 公開
2023年03月16日 更新

海老原嗣生(雇用ジャーナリスト)

 

営業職は二極化し、「すき間労働」化が進む!?

 ただ、営業職全体の雇用は減らないとはいえ、法人向けの営業領域で職務が二極化していくのではないだろうか。一方は、儀礼的な営業作法を、「時間と空間をつかむ」ための手段として使いこなすデキる営業。もう一方は、汗かきを見せればそれで許してくれるという、儀礼的な営業(とそれを求める顧客)。この2層に分かれて、後者もすたれることなく生き残るのではないか。

 AIが進化すれば、ビッグデータを自由自在に操って、効果的かつ顧客の度肝を抜くような提案もできる。それが、デキる営業の近未来の姿だ。ただ、こうしたハイレベルな営業には、ライバル企業もハイレベルな営業を充てるため、どちらも一歩も退けない状態が続き、業務の効率化など図れないだろう。いわば「刀がレーザーソードに変わっただけで、チャンバラを続けている」ような状態だ。

 一方で、そこまでの技量を持たない多くの営業職は、従来通り、顧客が多々要望を出し、それを社に持ち帰ってAIに入力し、生み出されたご託宣をありがたく顧客に持っていく。それを、メールや電話ではなく、対面で「人が話す」という行為で営業が成り立つ。顧客としては、あれこれ注文をつけ、そのすべてに忠実に応えることで信頼感が醸成される、というメカニズムだ。

 肝心な部分はAIが考え、顧客へ伝える部分だけを人が担う……。これは、AIの力が及ばない作業だけを人間が担う「すき間」労働に他ならない。結果、「AIによって営業職の雇用が奪われる」といった時代が来る前に、多くの営業職の「すき間労働」化が進むのだろう。

著者紹介

海老原嗣生(えびはら・つぐお)

雇用ジャーナリスト

雇用ジャーナリスト、ニッチモ代表取締役、リクルートキャリア社フェロー(特別研究員)。

1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(リクルートエージェント→リクルートキャリアに社名変更)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて人材マネジメント雑誌『Works』編集長に。2008年、人事コンサルティング会社「ニッチモ」を立ち上げる。『エンゼルバンク――ドラゴン桜外伝』の主人公、海老沢康生のモデル。
著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』(ちくま文庫)、『仕事をしたつもり』(星海社新書)、『経済ってこうなってるんだ教室』(プレジデント社)などがある。

THE21 購入

2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

シリコンバレーから見た日米AI格差とは?

石角友愛(パロアルトインサイト社CEO)

「変なホテル」が予言する未来の働き方とは?

澤田秀雄(H.I.S会長)

AIに仕事を奪われる「大失業時代」にどう備えるか

飯田泰之(駒澤大学准教授)