2018年05月25日 公開
2023年03月16日 更新
AIで仕事の49%が消滅する……。そんな議論がここ5年ほどで盛り上がり、「AI時代に生き残る仕事は?」、「AIに負けないスキルを身につけよう!」といった話題が絶えない。しかし、そもそも「AIで仕事消滅」という話はどこまで妥当なのだろうか?
『「AIで仕事がなくなる」論のウソ――この先15年の現実的な雇用シフト』の著者であり、雇用のカリスマとして知られる海老原嗣生氏は、すぐに雇用崩壊が起こることなどなく、まずやって来るのは「すき間労働」化だと言う。営業職を例に解説する。
ちまたの「AIで仕事がなくなる」論には、各職種ごとの仕事内容への精査が欠けている。そこで、AIによる営業職への影響を考える前に、そもそも営業行為の内実を考えよう。
まず、なぜいまだに人は「訪問して」営業行為をするのか。その理由は、「相手の時間と空間を押さえられるから」である。メールなら読まずに捨てられ、電話なら切られる。一方、訪問をすると、必然的に「ある一定の時間、同じ場所に一緒にいて」逃げられない状態になる。その状態なら、必ず交渉が行える。だから、アポイントを取る必要があり、そのためには一見「無用」な儀礼的行為も重要となるのだ。
良い営業マンはそこを理解して、儀礼的行為をあくまでも手段としてとらえている。だから、目的である「時間と空間」をもらうためには、どのような儀礼が必要か、相手に合わせてしっかりと手はずを整えるのだ。
たとえば、単に肌合いを重視するタイプのクライアントであれば、「ちょっと近くまで来たから寄りました」、「来週空いている夜があったら一杯行きませんか」、などが重要な儀礼となる。一方、そういう肌合いが嫌いで、とにかく合理性を重視する相手であれば、詳細なシミュレーションデータをそろえて、相手が疑問に思っている要素に対して、かゆいところに手が届いた資料を作り、メールで送る。
そうやって、相手に合わせてアポをもらうために意味のある「汗かき」をするのが良い営業といえるだろう。逆にできの悪い営業は、儀礼的行為を「それさえすればいい」と考え、意味のない行為をする。だから売れない。
この一連の「儀礼的行為→時間と空間をつかむ」というプロセスは、それ自体が1つのプロジェクトでもあり、それをつつがなくこなす行為は、AIで代替しにくい「クリエイティブ(顧客への有効打を考える)」と「マネジメント(儀礼からアポまでのプロジェクト管理)」が必要となる。だから、こうした営業行為は、そう簡単にはAI化できないのだ。
更新:11月25日 00:05