2018年02月09日 公開
2022年11月30日 更新
ロボットや最先端テクノロジーをいち早く取り入れたホテルとして話題の「変なホテル」。ロボットやAIが働く未来の職場を見ているようだが、そこには単なる効率化・自動化だけではない、我々人間のこれからの働き方のヒントも大いに隠されている。「変なホテル」の仕掛け人であるエイチ・アイ・エス会長・澤田秀雄氏に、これからの働き方のヒントをうかがった。
ロボットが接客するホテルとして話題の「変なホテル」が長崎のハウステンボスに誕生して2年半余り。現在営業中の4店に加え、今年中には全国で8店の開業が予定されている。閑散期でも稼働率80%を超えるという人気ホテルの仕掛け人がエイチ・アイ・エス会長であり、ハウステンボス社長の澤田秀雄氏だ。「変なホテル」はどう誕生したのだろうか。
「ハウステンボスには、『ホテルヨーロッパ』という五ツ星ホテルがあります。アムステルダムの老舗ホテルを再現した内装は、まるでヨーロッパにいるかのようで、サービスの質も高い。でも、あるとき、サービスの質が多少簡素化されても、安く泊まれるほうを喜ぶお客様もいるのではないかと思ったのです。
ホテルの運営コストで『人件費』は多くを占めています。そこで、少ない従業員でも営業できるようにするためにはどうすればよいか考えた結果、ロボットに行きついた。生産性の高いホテルの実現を考えた先にあったのが、ロボットが接客をするホテルだったのです」
現在、「変なホテル」に導入されているのは、チェックインや掃除、芝刈りなどの作業を担当するロボットが27種類、200体以上。その結果、人間の従業員は6~7人になったという。
「人間の従業員は、セキュリティのためにバックヤードに一人常駐するのみ。ただ、ホテルは24時間営業ですから、1日3交代と休暇も考えて6~7人でまわしています。部屋数が144あるハウステンボスのホテルの場合、通常は30人程度の従業員が必要であることを考えると、かなり生産性が高いですね」
20代で旅行会社を創業以来、航空業界、金融業界で結果を残してきた澤田氏がハウステンボスの再建に着手したのは今から8年前。数々の改革や新事業を試み、今では大きな収益を上げるビジネスへと成長した。
その新事業の一つが「変なホテル」だ。とはいえ、オープン当初から200体もの完璧なロボットがいたわけではない。
「最初から完璧を目指そうとすると、時間とコストがかかります。たとえば掃除ロボットでいえば、髪の毛の1本も落ちていないように細かく確認しながら掃除するのは、ロボットにはまだ難しい。だからといって完成形を待っているのは時間のムダです。
ビジネスにおいて何より重要なのはスピード感。ですから、100%は無理と割り切ってまずはスタートし、ロボットができない部分は人間が補いながら使って、問題があれば改良していけばいい。『変なホテル』とは、『変わり続けるホテル』『進化し続けるホテル』なのです」
とくに、チェックインのシステムは、この2年間で飛躍的な進化を遂げたという。
「オープン当初は、お客様にボタンを押してもらい、音声指示に従ってチェックインの手続きをしてもらっていました。次に、音声認識を導入し、マイクに向かって話しかけられるようにしました。
今は空中操作ディスプレイが導入されていて、目の前に浮かび上がるスクリーンの操作でチェックインが可能です。将来的には顔認証技術を使ったチェックインも実現できるよう、研究を続けているところです」
昨年11月には、無人でお酒を提供する「変なバー」がオープンした。
「飲み物の注文は、専用タブレットの映像に登場する『アヤ』というキャラクターと会話しながら行ないます。最初のうちはバックヤードのスタッフが受け答えしますが、そのやり取りをAIが学習することで、将来的にはAIがほとんど回答できるようになると考えています。これも最初からAIにすべて任せるのではなく、経験値を蓄積させて、徐々に代替部分を増やしていくのがいいですね」
いずれは完全にロボットだけの「無人ホテル」の実現も視野に入れているという。
「ホテルの展開を進めていき、将来的にはハウステンボス内にコントロールセンターを設置して、カメラを通して各ホテルを管理・コントロールできるようにしたいと考えています。お客様からの質問もコントロールセンターで受けるようにするため、完全に無人。ただし、何かあれば30分以内に人が駆けつけられるような態勢は整える必要があります。その環境さえあれば、ロボットだけのホテルも可能です。
今年は東京に『変なホテル』が5店舗開業予定です。そのうちの1店で、完全無人化の実験をしたいと考えています」
更新:12月02日 00:05