2018年05月21日 公開
2023年03月14日 更新
アマゾンが大企業病を回避するにあたって最も貢献しているのが、この点であると私は考えています。ベゾスはアニュアルレポートのなかで「DAY2の会社の意思決定は遅い。DAY1のエネルギーとダイナミズムを維持するには、質のよい迅速な意思決定が不可欠である」と結論づけています。
しかし常識的に考えて、創業したばかりで小回りの利くベンチャーにはそれが容易にできて、大企業になるほど難しくなるのは避けがたい。そこでアマゾンでは意思決定において4つのルールを定めています。
意思決定には後戻りできるものと、できないものがあります。後戻りできるものに関しては失敗する可能性も織り込みつつどんどん決定すればいいが、後戻りできないものは深く議論するという方針を取ります。ベゾスにしてみれば、これは「小さな意思決定はメンバーに任せる、大事な意思決定のみ自分もコミットする」という態度の表明でもあるのでしょう。
情報が集まるほど意思決定の精度は高まりますが、100%の情報を集めようとすると、いつまでも意思決定できないままになってしまう。そこで、70%程度の情報が集まった時点で意思決定すると割り切るのです。「軌道修正が得意ならば、間違えるコストは大したことがなく、遅いことのほうがよほど高くつきます」とベゾスは言います。
もっとも、アマゾンにおける「7割の情報」がどれだけの情報量になるか、ちょっと想像がつきません。普通の会社にとっての10割以上の情報であっても何らおかしくありません。世界一のIT企業にとっての7割である、という点は心に留めておくべきだと思います。
「簡単に合意するな、意見があれば妥協せず議論なさい、しかし一度決まったことにはコミットしなさい」とベゾスは語っています。
つまり、徹底的な議論をしたのなら、その結果がベゾス自身「ちょっと違うな」と思っても、そう決まるならコミットしよう、ということです。
チーム間で意見の相違があり、議論してもそのギャップを埋めがたいことがあります。そんな場合は議論を繰り返して疲弊する前に、上層部に判断させること、とレポートにはあります。
ベゾスは意思決定を明快に2つに分類したように、部署間の調整についても2つに分類しています。部署間の利害対立による意見の相違は部署間では調整困難なものと明快に定義し、それは早急に上層部に判断させるとしているのです。経営者である自らが関与すべきものとそうではないものを明確にし、関与すべきものに集中、そうでないものは現場に任せる。これが、まさにアマゾンにおける高速の意思決定システムの秘訣なのです。
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更新:11月22日 00:05