2018年01月07日 公開
2023年03月23日 更新
資料を作る場面は、良い報告やセールスポイントのある商品についてばかりとは限らない。それでも、できるだけ資料をよく見せる方法はないだろうか。そんな、多くの人が悩みがちな場面で、ちょっとした工夫で印象をガラリと変えることができるテクニックをご紹介。大手企業でスライド製作を監修するプレゼン資料作成のプロである加藤智也氏に、Q&A形式でポイントを解説いただいた。
新商品に実績がないのは当たり前。しかし、相手の立場になって考えれば、導入実績のないサービスや商品は怖くてなかなか手を出しづらいものです。そこで、まずは周辺情報を集めましょう。具体的には、新商品のマーケットの数字を調べ、それがどのくらい大きいかを示す。あるいは、類似商品やサービスのデータを調べ、伸びていることを示すなどです。顧客の信頼を得られそうな具体的な情報を集めましょう。ただ、それでも不十分ならば、新商品開発秘話や製品の変遷を加えてみましょう。「開発者や技術者がこだわりぬいて製品を開発してきた」「自社の歴史の中で新商品はどのような位置づけか」などといった商品に対する想いは、時として数字以上に説得力を持つ場合があるからです。
悪い結果を報告する場合、まずは「ネガティブな結果をポジティブに変えられないか」を考えます。たとえば、右の例では販売額が前々期4,600万円、前期4,400万円、当期4,200万円と減少しているように見えます。ただ、別の見方をすれば、3年連続で4,000万円台は維持している。そこを「3年連続4,000万円台突破!」と言い換えるのです。グラフも、縦軸の目盛りを除外し、縦軸の長さを調整するといいでしょう。同様に、「とても満足」「満足」「普通」「不満」「とても不満」という5択でアンケートを取った際、「とても満足10%」「満足20%」「普通30%」「不満25%」「とても不満15%」とあまり芳しい結果が出なかった場合、「満足が30%」ではなく、「不満ナシが60%」と言い換えれば傷は浅くなります。嘘はついてはいけませんが、少しでもポジティブに寄せましょう。
自社に誇るべき実績がある場合、なるべくそれを強調したいもの。たとえば「シェア」ならば、通常は時計の12時の位置から始まる円グラフを、少し回転させてみましょう。そうして、自社の実績が「下」に来るようにするのです。人間の視覚は、自分の目から近い距離にあるものが大きく見え、また、下にあるもののほうがどっしりとした安定感が感じられるからです。これに加え、自社の数字は他よりも大きく表示する。さらに円グラフを「3D」にすることで図の厚みが増し、より効果が上がります。ここでポイントが、自社のグラフは他と切り離して表示すること。こうすることで、別格感を演出をすることができます。
プレゼン資料のライティングは才能だと思われるかも知れませんが、いくつかの「コツ」があります。たとえば「相手目線」。「当社のサービスは格安です」というのはあくまで自分目線ですが、それを「コストを10%カットできます」と相手目線に変えるだけで、印象は大きく変わります。あるいは、「五感を使った表現」に変えるという方法も。「わかりやすくなる」という表現より、「スーッと頭に入る」のほうが、より伝わりやすいのは言うまでもありません。「ですます調」と「である調」は一つの資料の中では統一するのが原則ですが、あえて箇条書き部分だけ「である調」にするなどして混在させると、強い印象になることも。資料作成後、こうした言い換えができないか、最終チェックするクセをつけましょう。
昔ほど男女で思考の差がなくなってきたとはいえ、やはり男性・女性の差はいまだに大きいもの。もし、男性であるあなたが女性的なスライドを作りたいなら、いくつかのポイントがあります。一つは「なるべくカラフルな色を使うこと」、そして、「繊細な文字」を使うことです。同じゴチックでも繊細な文字というものは存在します。逆に女性が男性的な資料を作りたいなら「深みのある色」を使ったうえで、なるべく整然としたレイアウトにすると、男性らしさが出るはずです。
『THE21』2017年11月号より
取材・構成 THE21編集部
更新:11月26日 00:05