2017年12月08日 公開
2017年12月08日 更新
上田氏自身、40代最大の試練をこのポジティブシンキングで乗り越えたという。
「畜産課長をしていた頃の話です。通常、食肉はアメリカやオーストラリア、デンマークなどのサプライヤーから買い付けて、それを国内の買い手に販売します。しかし、私は先にお客様から注文を取って、それから買い付けにいきました。国内のお客様をいち早く押さえたので、ライバルの商社は注文がとれず、サプライヤーに発注することもできません。そうすると、いつも日本から注文が入る時期に注文がなくなるので、食肉相場は下落。そこに私が登場して、安く買い付けるというわけです。
この掟破りの方法で、2年は莫大な利益を得ました。しかし、調子に乗って天罰が下ったのでしょう。3年目に大手のサプライヤーが倒産して、すでに注文を受けた食肉原料を急に調達できなくなったのです。急いで国内市場に出荷済みの原料を押さえましたが、それでも6割しかカバーできず、4割分は会社に大損害を与えてしまいました。
社内の評価はガタ落ちです。きちんと会社から許可をもらってしていた仕事なのに、いざ失敗すると、『いい加減なお前が悪い』と。業界でも『上田が調子に乗って倍返しを食らったらしい』と笑いものです。
結局、この失敗の処理に一年以上かかりました。針のむしろの一年でしたが、このとき支えてくれたのも、『元気、勇気、夢』。逃げずに前向きに敗戦処理を地道に頑張っていたら、逆にお客様から『信用できる奴だ』と評価されて、その後、長い取引関係を築くことができました。
仕事に戦略、戦術、実践のレベルがあるとしたら、20代、30代の仕事は戦術や実践で、失敗してもたいしたダメージはありません。しかし、40代になると戦略的な仕事にシフトしていき、一つの失敗が命取りになることもある。だからむやみにリスクを取りに行くのはダメ。現実にリスクはどの程度なのか、失敗したときはどうやってリカバーするのかを計算したうえでリスクを取りに行くべき。それが40代の責任です。
もしそこまで考えて結果的に失敗したなら、仕方がないじゃないですか。厳しい状況を乗り切る方法について悩んで考えるのはいい。だけど、気分まで落ち込ませる必要はない。40代は今まで経験してこなかった壁にぶち当たる時期ですが、追い詰められたときほど『元気、勇気、夢』で前を向いてほしいですね」
《『THE21』2018年1月号より》
更新:11月24日 00:05