2017年09月29日 公開
2023年07月03日 更新
私がメンターとしている経営者の一人が、ベルナール・アルノー。ルイ・ヴィトン、ディオール、フェンディ、ホイヤーなど数々のブランドを買収し、世界最強のブランド帝国であるモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)グループを作った「帝王」。欧州の長者番付の常連でもあります。
まったく畑違いに思える彼をメンターにしていることを意外に思われるかもしれません。ですが、彼がやったのは老舗ブランドを現代によみがえらせたということ。一方、私がやりたいことは、人のブランドを束ねていくこと。どちらも「ブランド」がカギであり、ブランドをどう生かし、経営をしていくかという点で、非常に多くの示唆を与えてくれます。そんなアルノーの著作『ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る』は、節目で何度も読み返してきた一冊です。
日本人で尊敬する経営者も数多くいますが、ヤマト運輸元社長の小倉昌男氏もその一人。ご存じ「宅急便」の生みの親です。著書『小倉昌男 経営学』はまさに「事業開発戦略の教科書」といえる名著です。
本書には小倉氏が社員の抵抗や国の規制などさまざまな困難にあいながら、何を考え、どういう苦労をした結果、宅急便を生み出したというプロセスが赤裸々に描かれています。これはつまり、事業を立ち上げ、成功に導くまでの困難や苦労を疑似体験できるということ。これほど貴重な読書体験はありません。
『起業家福沢諭吉の生涯』は、教育者として知られる福沢諭吉の「起業家」の側面に光を当てた本。実際、彼は教育者であるとともに起業家、経営者であり、同時代の経営者たちとの付き合いも深かったそうです。ただ、そのため「学商」――すなわち、学問を使って商売をしている人と批判されていたというのです。
これは、後世になって評価される人が、必ずしも同時代人から正当に評価されているとは限らない、ということです。新しいことを始めるとどうしても批判を受けがちですが、そんなときにぜひ読んでほしい一冊です。
私は物事の本質を解き明かすような本をよく読むというお話をしましたが、ノウハウ本や即効性のある本も嫌いではありません。むしろ、その根底にしっかりした理論があるノウハウ本は好んで読みます。そんな中でもとにかく「実用的」な本を紹介してほしい、と言われたら、まずはこの『ザ・ワーク』を挙げたいと思います。
副題「人生を変える4つの質問」のとおり、4つの質問をするだけで目の前の問題がみるみる消えていくというもの。4つの質問とは、「それは本当でしょうか?」「その考えが本当であると、絶対言い切れますか?」「そう考えるとき、(あなたは)どのように反応しますか?」「その考えがなければ、(あなたは)どうなりますか?」というシンプルなものですが、効果は絶大です。
『Provocative Coaching: making things better by making them worse』は、残念ながら邦訳は出ていませんが、これも非常に面白く、かつ役立つ本です。
内容はとにかく刺激的。ひと言で言えば「相手を侮辱、挑発することで成長を促す」というコーチング方法。つまり、パワハラ・セクハラに近いことをすることで成長させるという毒のあるテクニックなのです。
ちなみに本書の根底にあるのは、「成熟した大人として人を育てるよりも、『道化師』として育てたほうが、成長は早い」という考えです。これは人間の本質をついていると思います。確かに人間的に成熟できればそれに越したことはないけれど、時には道化師・ピエロになることで、何かに挑戦したり、悩みを吹っ切ることが大事なこともある。
しばしば「最もお金を稼ぐのはコメディアンだ」と言われます。確かに、トム・クルーズよりもビル・コスビーのほうが、日本ならキムタクよりもタモリのほうが稼いでいる。さらに、寿命も長いと言われます。その問いに対する答えがここにあるかもしれません。
もし私が「その本を読んだことで、最も稼がせてもらった本」を挙げろと言われたら、本書『頭脳の果て』になると思います。本書で取り扱っているのは「いかにアイデアを生み出すか」ということ。それも、ロジックだけでなく、「イメージ」の力によってアイデアを引き出すための具体的な方法論が紹介されています。
今の時代、最も価値あるものは「アイデア」です。シリコンバレーのベンチャーキャピタルの間では、「一番価値のあるものはアイデアであり、一番安いのはお金」という考えが常識。つまり良質なアイデアこそが最大の価値を持つ。では、そのアイデアを作り出すための方法とは何か。それを教えてくれるのが本書なのです。
更新:11月22日 00:05